福井工業大学の取り組み

大学・民間で国内最大級のパラボラアンテナ完成 

月周回軌道衛星運用のパイオニア目指す

福井工業大学(福井県福井市)は、あわらキャンパス(福井県あわら市)に「月周回軌道までの衛星運用が可能な地上局」の構築を目指し、衛星地上局の整備を進め、このほど、大学・民間で国内最大級となる口径13・5メートルのパラボラアンテナが完成した。6月1日には、「完成お披露目式及び特別講演会」を開催した。

同大学は2000年、同キャンパスに口径10メートルのアンテナを設置し、衛星データ利用に関する研究を行ってきた。2016年、衛星利用に関する基盤技術の確立と先進的な超小型衛星の開発設計および運用にチャレンジするプロジェクトが文部科学省私立大学研究ブランディング事業に採択され、その取り組みを発展させた「ふくいPHOENIXハイパープロジェクト」を構築。福井県や地元企業の協力体制に加え、宇宙航空研究開発機構(JAXA)との共同研究で、今後、重要視される月周回軌道衛星との通信も可能な高性能口径13・5メートルのパラボラアンテナの設置計画を推進し、約1年を経て完成した。

同大学はこれまで、衛星画像で漂流物を監視し、美しい海の実現を目指す「日本海漂流ごみの監視手法の開発に関する研究」や、星空保護活動を通じて人の幸せの在り方を探る「人工衛星を使った街灯りの『量と質』の測定」などを行ってきた。

今後は月周回軌道衛星運用のパイオニアとなることを目指し、JAXAや福井県などと共同して、地域産業・観光・環境保全など、さまざまな分野の発展に取り組んでいく。

「完成お披露目式」で、同大学の掛下知行学長は完成したパラボラアンテナの運用予定について「来年打ち上げ予定のJAXA開発の深宇宙探査技術実証機『DESTINY+』を数年間、観測予定で、運用には本学の学生が多数参加する」と説明した。また、「全学を挙げて宇宙AIに挑戦する大学として展開し、世界の宇宙科学および宇宙産業における人材の拠点となることを目指して宇宙に興味のある若者がこの地に多数訪れることを期待している」と話した。

福井県の杉本達治知事は「今後も福井工業大学が新しい多様な宇宙分野での研究、県内の産業との連携を果たしていくと思っている」と述べた。

内閣府宇宙開発戦略推進事務局の渡邉淳審議官は「岸田総理とバイデン大統領が日本人飛行士の月への派遣計画の検討を進める中、月との通信は重要課題の一つ。福井工業大学のパラボラアンテナ等が貢献する可能性があると期待する」とした。

文部科学省研究開発局宇宙開発利用課宇宙連携協力推進室の臼井暁子室長は「福井工業大学のアンテナは今後、月面における有人探査活動が検討される中で、重要性が高まっている」と話した。

JAXA理事、宇宙科学研究所所長の國中均氏は「福井工業大学と共同研究などを進め、技術開発や新しい技術者の輩出に協力していきたい」との考えを示した。

特別講演会には、日本人初の宇宙飛行士で、現在は日本科学未来館名誉館長、全国科学館連携協議会会長として、地域活性や人材育成に取り組む毛利衛氏が登壇。「宇宙から学ぶ未来智」というテーマで、ミッション映像を交え、宇宙から見た地球、そこから見えてきた生命の「つながり」と、地球生命として生きる道に必要な「未来智」の考え方などを紹介した。