第4回デジタル学習基盤特別委開く

端末活用に係る伴走支援等取り組み報告 

デジタル教科書推進WG設置を承認

文部科学省中央教育審議会初等中等教育分科会のデジタル学習基盤特別委員会(委員長=堀田龍也・東京学芸大学教職大学院教授)は7月12日に第4回委員会を対面とオンラインを併用して開催した。文科省から公立学校を中心とした端末活用に係る伴走支援等の取り組みが報告されほか、令和6年度から本格導入されたデジタル教科書に関し、次期学習指導要領の検討やGIGAスクール構想第2期を見据え、その効果・影響を検討し、学びの充実の観点から、デジタル教科書のあり方、推進方策を検討審議するため、特別委員会のもとに「デジタル教科書推進ワーキンググループ」を設置する提案が文科省からあり、委員から承認された。

端末活用に係る伴走支援に関して、文科省は世界に先駆けわずか1、2年で1人1台端末の整備が完了したものの、活用に関しては地域・学校間の格差は大きく、端末更新、学校のネットワーク環境の改善が急務となっていると報告。そうした課題解決のため令和5、6年度に徹底的な伴走支援の強化により一気に底上げを図る計画で、具体的には令和6年度リーディングDXスクール事業で、256のリーディング指定校に経費支援、国費による学校DX戦略アドバイザー派遣などを行っていくこと、生成AIパイロット校を公募し、66校でAIによる教育活動の充実や校務の効率化の事例を創出することを説明。

また全国各地から配置された12人の教師が「GIGA StuDX推進チーム」(通称:ギガスタチーム)を組み、特設ウェブサイトからの情報発信やメルマガの配信、研修の講師派遣などを行うほか、令和6年度以降は、都道府県域での次世代型校務支援システムの共同調達や、クラウド環境を活用した校務DXを進めることを説明した。 さらに文科省CBTシステム(MEXCBT‥メクビット)に関しては、令和5年度全国学力・学習状況調査・中学英語「話すこと」調査での活用(約100万人)に続き、令和6年度は全国体力・運動能力、運動習慣等調査(中学)で活用、令和7年度に全国学力・学習状況調査中学校理科の悉皆実施で活用する予定、とした。

続いて課題となっている学校のネットワークの現状について文科省から報告があった。その中で同省は令和5年11月から12月にかけて各都道府県・市町村教育委員会約1800委員会と全国の公立小・中・高等学校約3万2千校を対象に、GIGA端末を使用する通信速度などの調査を行い、端末を十分に活用している実測データを基に、学校規模ごとに1校当たりの帯域の目安(当面の推奨帯域)を設定し、当面はこの推奨帯域の整備を目指すこととした。

例えば児童生徒数が525人の学校の当面の推奨帯域は511Mbps、1015人では698Mbps、1400人では834Mbpsなどとしている。推計によると当面の推奨帯域を満たす学校は2割程度に過ぎず、学校規模が大きくなるほど推奨帯域を満たす学校の割合が少なくなる傾向で、児童生徒数が700人を超えると推奨帯域を満たす学校の割合は5%前後に低下している。

こうした課題の対応策として、財政支援によるネットワークアセスメントの実施の徹底(不具合の原因特定が不十分)、安価な調達事例の横展開、広域調達・共同調達の支援など、そして自治体担当者の専門性の向上のために、令和6年4月に発行した「学校ネットワーク改善ガイドブック」の活用を挙げている。

また高橋純委員(東京学芸大学教授)が主査を務める次期ICT環境整備方針の在り方ワーキンググループの審議の取りまとめ案についても説明があった。

ICT環境の整備は、個別最適な学びと協働的な学びの充実を図るための不可欠な学習基盤であり、そのために高速ネットワークは不可欠で、当面のKPI(重要業績評価指標)は、令和7年度は100%の学校で必要なネットワーク速度を確保済み、としたこと、高校では保護者の理解を求めながら令和6年度内に1人1台環境を実現する整備を進めること、校務DXでは校務用サーバをクラウド環境へ移行し、それに伴い、多要素認証等、強固なアクセス制御に基づくセキュリティー対策を検討すること、ICT支援員の配置目標が4校に1校で未達成となっており、達成に向け必要な事項、望ましい事例などを文科省が自治体に示すことが求められる、などとしている。

こうした文科省の報告に対して、特別委員会の委員から意見が出され、端末活用の支援に関しては、「MEXCBTの日常での活用ができてない。ICT支援員がMEXCBTの勉強をした上でアドバイスが必要。支援員にもMEXCBTの研修をお願いしたい」との意見があり、学校のネットワークに対しては「学校の立地によってネットワーク回線のつながりやすさに差が出る。よって公教育では自治体で学校ごとに何が最適かを考えるリテラシーとそのための予算配分が必要だ。全国学力調査で回線がダウンしてしまうのは一番の問題。一斉実施を避け、ネットワークの分散を考えるべきだ。学力調査へのIRT(項目反応理論)の導入も検討したい」といった意見が聞かれた。

また、次期ICT環境整備方針の在り方ワーキンググループの審議の取りまとめ案に関しては、委員から「個別最適な学びの保障で、障害のある子供のへの配慮にも触れたい」「災害時に備えて端末の持ち帰りを標準化させるレジリエントスクール構想を取り入れたい」などの意見が聞かれた。