急速な少子化の中の高等教育のあり方

特別部会の委員も参加した大学分科会

中教審大学分科会 中間まとめ案を了承

具体的施策は引き続き検討

地域の人材養成危惧する声も

中央教育審議会の大学分科会(分科会長=永田恭介・筑波大学長)と大学分科会の下に設置されている高等教育の在り方に関する特別部会(永田恭介部会長)の合同会議が7月19日、対面とWEBを併用して開催された。この日は特別部会が中心となって過去7回審議を重ねて策定した審議の中間まとめ案が親会議の大学分科会に報告され、委員からさまざまな意見が出され、意見などの反映に関しては永田分科会長に一任され、8月中に中間まとめとして公表することが了承された。

この日示された中間まとめ案は全体で53ページで、6月28日に開催された第7回特別部会に示された中間まとめ案と比べ10ページ増えていて、7月19日の合同会議で委員の大きな関心を集めた高等教育全体の規模の適正化に向けた支援の具体的方策に関しては、私立大学の公立化のプロセスにおいて留意すべき事項等の明確化(安易な私立大学の公立化は避ける必要がある)や、高等教育機関間の連携の推進において、DX等の活用を通じた、連携・統合などを希望する学校法人への経営相談や、客観的な経営診断を踏まえた「アウトリーチ型支援」の充実などが盛り込まれている。

ただし高等教育改革を支える支援方策の在り方に関しては、具体的方策は提示されておらず、機関補助と個人支援のそれぞれの特徴を踏まえた公財政支援の在り方や、基盤的経常費助成と競争的資源配分による支援の在り方など3点の観点から引き続き議論を重ねていくことが必要などとの記述となっている。

大学分科会の委員からは、「地方の大学の活性化には地域の産業の活性化が大事。文部科学省だけではなく政府全体として地方の大学の活性化を検討すべきだ」「(中間まとめ案の具体的方策に)厳格な設置認可審査の実施等とあるが、従来の事前チェックは緩く、事後チェックは厳しくとの方針を変えるのか、変えないのか。認証評価機関の在り方を変えていかないければいけない」といった意見が聞かれた。

また私立短期大学関係の委員は、地域や社会のニーズ等を踏まえ高等教育の規模の適正化を図ることの必要性が記述されたことを評価しつつも、定員充足率を満たせないために、令和7年度に20校を超える短期大学が学生募集を停止する予定で、保育士や栄養士など数千人規模の養成ができなくなる事態となったことを報告、省庁横断的な検討の必要性を訴えた。また機関別、設置者別の役割の箇所で短期大学の特性などの記述の充実を求める意見も聞かれた。

このほか教育に対する公財政支出をOEDC加盟諸国と遜色ない水準まで引き上げることを求める意見、文科省に留まらず、急速な少子化が進行する中での高等教育の在り方については省庁横断的な審議を求める意見が複数の委員から出された。

地域での保育士や栄養士等養成校の募集停止に関しては、小学校の教員の養成についても長期的に見ていく必要性を指摘する意見も出された。

永田分科会長は、トラックの運転手不足問題に触れ、数年後には運転手のいないトラックが走るなどデジタル技術を活用した対応が取られようとしていることを指摘して、保育士等を養成する短大等の募集停止に関しては、「全部が全部日本社会が継続することはない。2040年について考えているので、本当に変わってしまっているであろう日本社会のことを考えて書いている。人を育てる部分で人との関わりは非常に大事だが、それ以上にいろいろな社会変革が起こっている中でそれに対応、けん引する人をどうつくるかで、ご不満も出てくるだろうが、相当責任ある書きぶりにしないといけない」と語った。

この日の大学分科会では急速な少子化が進行する中での将来社会を見据えた高等教育の在り方に関する審議以外では、(1)医学部臨時定員増に係る大学設置基準の一部改正に関して諮問が行われ、答申が行われた。諮問が行われたのは、令和6年度に行われた医学部入学定員増の枠組み、具体的には地域の医師確保の観点からの定員増(地域枠)、研究医養成のための定員増(研究医枠)について令和7年度においても措置を継続することの是非が諮られ、委員から承認された。

また(2)情報公表に関する制度改正(学校教育法施行規則改正)案が提案され、承認された。法令上追加される公表すべき情報は、入学者選抜に関すること、外国人留学生の数に関すること(科目など履修生などを含む)、標準修業年限で修了した者の占める割合その他学位授与の状況に関すること(大学院のみ)。このうち入学者選抜に関しては、合否判定の方法や基準、合理的配慮の提供に関する対応方法などを想定、標準修業年限以内で修了した者の割合等に関しては、標準修業年限以内で修了せず退学した者の割合などを挙げており、公表した数値の分析・解説の公表を推奨している。

(3)次期5か年計画(令和8~12年度)策定に向けて審議が始まった今後の国立大学法人等施設の整備充実に関する調査研究協力者会議の論点等や、(4)博士人材活躍プランが文科省から説明された。