初等中等教育段階における生成AI利活用検討会議が初会合
教育利活用、校務利活用に関する留意点や方策等を検討
文部科学省は7月25日に第1回初等中等教育段階における生成AIの利活用に関する検討会議を開催した。座長には石川正俊・東京理科大学学長が選任された。オブザーバーとして内閣府、経済産業省、総務省が参加している。初めに文科省の学校デジタル化プロジェクトチームから初等中等教育段階の生成AIのこれまでの取り組みに関して説明があった。令和5年7月に「初等中等段階における生成AIの利用に関する暫定的なガイドライン」を公表。学習活動で使う場合は、学習指導要領に示す資質能力を阻害しないか、教育活動の目的を達成する上で効果的か否か判断すべきとした。まずは特定の学校を対象にパイロット的な取り組みから始め、成果・課題を検証し、さらに議論を進める方針で、昨年度は37自治体、52校を生成AIパイロット校として指定した。全ての学校はファクトチェックの習慣づけなど、情報活用能力を育む教育活動を充実させる必要がある、とした。校務では研修や適切な活用に向けた取り組みを推進し、教師のAIリテラシーの向上や働き方改革につなげるとしている。年度取り組み終了時には各パイロット校の取り組み状況などのアンケートを実施した。昨年度の実践を経て、懸念されていた学習意欲や創造性の低下はほとんどなく、ファクトチェックの習慣づけは引き続き周知を図る必要があり、適切なガイダンスを基に、児童生徒の活用環境を整える必要性などが示唆された。
校務での活用に関しては、教員は生成AIの使用に慣れるところまでは進んでいない。活用は保護者向けの定型文などや教材や練習問題のたたき台に用いられる傾向が高かった。生成AIの使用を広めるには、教員コミュニティ内で周知・研修活動が有効と思われる、としている。
次世代の校務デジタル化推進実証事業を実施し、個人情報や機密情報が漏れないように対策したセキュアな環境下で校務での生成AIを活用する実証実験が行われている。今年4月には教育DXに係る当面のKPI(重要業績評価指標)を示し、生成AIを校務で活用する学校を令和7年までに全体の5割とする目標も出している。
次に総務省と経産省は今年4月に公表した「AI事業者ガイドライン(第1・0版)」の説明をした。ガイドラインはAIガバナンスの統一的な指針を示してイノベーションの促進とライフサイクルにわたるリスクの緩和を両立する枠組みを関係者と連携しながら共創することを目指し、随時更新することとし、AI開発者、AI提供者、AI利用者の3つに分けて整理されている。
本編では事業者がAIを安全安心に活用し、AIの便益を最大化するために重要な基本理念(どのような社会を目指すのか)と指針(どのような取り組みを行うの)を示した。付属資料では実践(具体的にどのようなアプローチで取り組むか)を示すことで、事業者の具体的な行動へつながることを想定している。
報告の後、文科省から急速に進化、普及するAIに対応するために現行ガイドラインを改訂する場合、委員に論点に何を置くか意見が求められた。委員からは「ガイドラインは情報活用能力の視点だけでよいのか。学習指導要領にある、問題・課題発見能力もカバーする必要があるのではないか」「生成AI活用の哲学や事例など全てをガイドラインに盛り込むのは無理なので、対象を絞ることが重要。ガイドラインとは別に具体事例を共有できるよう事例集を作ってはどうか」「ガイドラインの範囲は学校の中だけとするか、あるいは塾、学童保育など学外活動も含めるか」などの提案、意見があった。多くの委員から、「ガイドラインが次期学習指導要領に反映される提言となるようにしたい」との意見が出された。
委員の意見を受けて文科省の寺島史朗・初等中等教育局学校デジタル化プロジェクトチームリーダーは「事務局のガイドラインのイメージは現場の先生方が読んで、そのまま活用できるものと考えていたが、今日の議論を参考に、どのように対象を絞り込んでいくのか検討していきたい」と話した。次回は8月8日開催の予定。