中央教育審議会 質の高い教師確保で答申提出
処遇改善と働き方改革推進
高等教育の在り方中間まとめの議論も
文部科学省は8月27日に中央教育審議会(会長=荒瀬克己・独立行政法人教職員支援機構理事長)の第139回総会を同省講堂でウェブを併用して開催した。
総会では、「『令和の日本型学校教育』を担う質の高い教師の確保のための環境整備に関する総合的な方策について」の答申案に関する意見募集の結果報告が同省からあり、国民から合わせて1万8354件もの意見が寄せられたこと、主な意見としては、「教師の働き方改革の推進のためには処遇改善と時間外在校等時間の縮減を両輪で行う必要がある」「学習指導要領の内容の精選などによる確実な業務の削減と大幅な教職員定数の改善を同時に進めるべきだ」「教師の週当たりの持ち授業時数を20時間以内とするなど、国として上限を設けるべきだ」「給特法を維持した上での教職調整額の引き上げには賛成。大幅な増額が実現すれば教師志望者の増加が期待できる」「教職調整額を10%以上とすることに反対。長時間労働の改善にはつながらない」「給与の引き上げよりも、教師・保護者・地域の間の業務と責任の明確化が望まれているのではないか」など、処遇改善、働き方改革を求める意見が集まった。
答申案をまとめた質の高い教師の確保特別部会の貞弘斎子部会長(千葉大学教授)は「予算確保、制度改正はもちろんだが、今後は関わりのある人が全て当事者になっていただくことが重要。万能薬はない。小さなことを愚直に積み重ね、変化を実感し、さらに良くなるという見通しを持てるようにしたい。学校関係者だけでなく、社会の全ての人の力添えをいただきたい」と述べた。中教審の委員からは、答申案に環境整備に関わる工程表がつけられたことを評価する意見があった。また教師が余裕をもって働けるような学習指導要領の改訂が必要ではないかとの意見もあった。
答申案は総会で承認され、答申は荒瀬会長から盛山文部科学大臣に手交された。盛山大臣はこの後あいさつし、「概算要求のタイミングに答申が間に合い、予算に盛り込める内容は盛り込んでいきたい。国会内でも教師の環境改善の関心は高いので、予算措置、法律改正の実現に向けて取り組んでいきたい」と述べた。
次に昨年9月に出された諮問「急速な少子化が進行する中での将来社会を見据えた高等教育の在り方について」を審議する高等教育の在り方に関する特別部会の永田恭介部会長(筑波大学長)と文科省から、審議の中間まとめの報告があった。
急速な少子化により今後一層の大学入学者数の減少が予想されるが、人材育成と知的創造活動の中核となる高等教育機関の役割は増していること、主な検討事項は2040年以降の社会を見据えた高等教育が目指すべき姿、適正な規模を考慮した地域の質の高い高等教育へのアクセスの確保、国公立の設置者別の役割分担、高等教育の改革を支える支援方策で、今後の高等教育は、質の向上、社会的に適切な規模の供給、アクセスの確保による機会均等の実現が求められ、この3点はトレードオフの関係にもあることなどが説明された。
また今後の高等教育の政策の方向性と具体的な方策として、学生一人一人の能力を最大限高めることが必要で、厳格な成績評価など出口における質保証の促進、博士号取得者数の増加に向けた大学院教育の改革などが考えられるとし、高等教育の規模の適正化には外国人留学生や社会人受け入れの促進、厳格な設置認可審査の実施、大学再編・統合の推進などがある、としている。高等教育へのアクセス確保には、高等教育機関や地方公共団体などの地方の関係者が人材育成のあり方を議論する場の構築などが考えられること、高等教育改革を支える公財政支援の在り方、個人・保護者負担の在り方、寄附や社会からの投資など多様な資金調達を通じた経営基盤の確立・強化の方策が引き続き、議論されることなどが報告された。
中間まとめに関して委員からは、「大学は多面的、多角的な専門性を持ち、社会の変化をリードする力があるので、専門性をさらに高度化し、新領域にもチャレンジしてほしい。そのために教員の役割の検討も必要だ」「地域の高等教育のニーズが企業や地域の観点から強調されているが、高等教育を受ける側の視点が欠けている」「高等教育の質の高度化で何を目指すのか言語化してほしい」などの意見が出された。