第9回 中教審高等教育の在り方特別部会
7団体から中間まとめへの意見聴取
校種によって要望さまざま
文部科学省の中央教育審議会大学分科会の下に設置されている高等教育の在り方に関する特別部会(部会長=永田恭介・筑波大学学長)は9月10日、第9回部会を対面とオンラインで開いた。この日は、同部会が8月8日にまとめた審議の「中間まとめ」について、国立大学協会や公立大学協会、全国知事会、全国専修学校各種学校総連合会など7団体から意見聴取を行った。休憩を挟み4時間に及ぶ意見聴取だったが、同部会がまだ明確な改革案を提示しきっていないこともあって、同部会委員からは、意見聴取した団体から今後の話をあまり聞けなかった、として、「モヤモヤ」した思いを語る委員が複数見られた。次回以降、私立大学団体からも意見聴取が行われる予定。
意見発表では、国立大学協会は国民と社会のために、あらゆる利害を超えた活動が可能であり、それぞれが個性を発揮しつつ、人的・物的リソースの共有や協働を展開し、総体としての新たな連携の形として「国立大学システム」を提案。同システムには公私立大学も巻き込んで多様かつ効果的な連携の展開を行うとしている。また国立大学が秋入学を率先して本格実施・導入を検討し、留学生を在学者の3割程度に増やすこと、博士取得者を3倍増の年間3万人に増やし、アカデミア以外の進路に進む学生のためのプログラムを創設、国際共同研究、外国人研究者受け入れ、日本人研究者海外派遣等による頭脳循環の推進などにより、TOP10%論文の割合の向上、地域に存在する国公私立大学が協働した地方創生の取り組みの推進等を提案した。
公立大学協会は首長の影響が大きいため、設置者別の役割に関しては、常に厳しい調整局面を通じて行政側と高等教育に関する課題を共有してきた点にも留意して記述する必要がある、などと指摘、また中間まとめが地域における高等教育振興に関する担当部署の整備を提言していることに関して、「賛成できる、としながらも担当部署を機能させることは簡単ではないことに留意が必要」と述べている。
全国知事会は文教スポーツ常任委員長の大村秀章・愛知県知事に代わって牧野利香副知事が出席し、大学等に対して、人材育成や技術革新のための研究開発、開発した技術の実証実験、社会実装の先導モデル提示といった役割に期待感を表明しるなどしたが、部会の委員から「私立大学が若者を地域にとどめている」といった発言や、「私立大学や短期大学が地域の保育士等、エッセンシャルワーカーを育成しており、私学と県がタッグを組んで育成していくことの必要性」を尋ねた質問に対しては、私立大学は人を集められる分野が限られていること、後者についてはそうしたことに言及する意見が全国知事会ではなかったなどと回答した。
また全専各連は、アカデミックな教育体系と並び職業教育体系を整備し、人材流動性を担保する基盤としてのNQF(国家学位資格枠組み)を早急に構築することや、外国人留学生、社会人を始めとした多様な学生の受け入れ促進、高等教育機関卒業者として例えば国家資格取得者の当該資格での国内企業等への就職が可能となるような新しい在留資格創設などを求めた。
そのほか専門職大学コンソーシアム、全国高等専門学校連合会、日本私立高等専門学校協会が意見を述べた。
ヒアリング終了後、委員からは、欧州のようにもっともっと大きな枠組みでの連携の必要性、同部会としては具体的な幾つかの改革のシナリオ提示の必要性、また設置基準の遵守状況に加え、今後こうした機能の高等教育機関となることを目指し、必要な準備を進めているということを認証評価に加えていく重要性などが提案された。
このほか政策研究大学院大学の林隆之教授が「少子化・社会変革を踏まえた高等教育の課題と支援方策について」と題した意見発表を行った。その中では政府・大学自身も人材育成ニーズを把握するために戦略的インテリジェンスを高める必要性、国内外の大学間連携による教育・研究の革新、社会人博士学生への支援改善、大学の戦略・改革と結びついた内部質保証、高等教育の政策課題への実績(アウトカム)に応じた、安定した/予見性ある財政支援などの実施を提案した。