第10回高等教育の在り方特別部会開催

私大3団体から意見聴取

専攻科活用や定員管理見直し等提案

中央教育審議会大学分科会の高等教育の在り方に関する特別部会(部会長=永田恭介・筑波大学学長)は9月27日、文部科学省でオンラインも併用して第10回部会を開催した。この日は、第9回(9月10日)に続いて、今年8月に取りまとめた「中間まとめ」に対する大学団体からのヒアリングが行われ、日本私立短期大学協会(日短協)、日本私立大学協会(私大協)、日本私立大学連盟(私大連)の私大関係3団体が意見を述べた。

この中で日短協の麻生隆史会長は、日本各地で日常生活に欠かせないエッセンシャルワーカーを育成・輩出している短期大学が、急速な少子化が見込まれる2040年以降でも短大制度を発展・活用し、わが国の「知の総和」を維持・向上していく方策として、短大の2年間の教育を「前期課程」(ファーストステージ)、続く専攻科の2年間を「後期課程」(ネクストステージ)とし、後期課程修了者には学士の学位を授与、4年制大学卒業と同等(3年制短期大学の場合、専攻科は1年制を想定)とするなど、3つの活用案を提案。

同時に学生募集停止を表明する短大の増加の一因となっている国の修学支援新制度の機関要件等の見直しを要望した。

また私大協会の小原芳明会長は、特別部会の中間まとめの中核部分である高等教育の「規模」および高等教育への「アクセス」について、現在のような規制強化(私学助成の配分や設置認可、修学支援新制度の機関要件等)による収容定員管理を続けていけば、地方の人口減少に拍車をかけ、やがては地方から大学進学の機会が失われ、若者の地域流出を助長させかねないと指摘。そのため各大学の判断で、(1)「収容定員」は維持したままで、(2)これまでの入学者実績等を踏まえて収容定員から「一時的に削減する定員数」を文科省に届け出ることを可能とする恒久的な制度の早期創設を要望。また社会人に対するリカレント教育やリスキリング教育に大きな期待が寄せられている中で、米国のようにパートタイム学生を収容定員へ加算するための方策の検討、修学支援新制度で「直近3年度の収容定員充足率が8割未満」の大学を対象外とする機関要件によって支援対象となる学生が学びたい高等教育機関で学べない矛盾が生み出されている、と指摘。学生に責任のない機関要件は撤廃されるべきだなどと要望した。

私大連の曄道佳明副会長は大学設置認可や大学設置基準を形式的な内容から質を問うものに転換していくこと、国の予算措置における現在の方法(一律の要件項目による加点方式等)は結果的に教育研究の画一化を招きかねない可能性がある、と指摘。また現在、成長分野とされる、理工農系に限らず、学問分野を問わず科学的アプローチを養うことの重要性を施策に反映すること、高校段階での文・理の早期の学習コース分けが生じないよう大学入学共通テストの見直しを提案。そのほか自宅外生に対する給付型奨学金の増額、学生が大学間共同で利用できる集約型の学生寮等を国の支援で用意すること、国公私立の設置形態ではなく、各大学を機能別に捉えていく必要性、さらに今後の高等教育の在り方の重要な鍵は、大学間での有機的な連携協力体制の構築だと指摘、真に連携を必要としている地方の私立大学が知の蓄積とノウハウを活かしさらに発展できるよう、財政支援を含めた連携施策を提示するよう求めている。

ヒアリングでは全国公立短期大学協会も意見を表明、短期大学と併せ専攻科で所要の単位(124単位以上)を修得した者については大学改革支援・学位授与機構における学位の取得を必要とせず大学院入学資格が付与される制度の検討を要請している。

またヒアリングに先立って東北大学大学院教育学研究科の島一則教授が「設置主体別の大学の役割に基づく支援方策」の在り方について意見発表を行い、国立大学については、基盤的資金が減少し、競争的資金等が拡充する中で、研究機能の国際的地位や世界大学ランキングは低下を続けていること、基盤的資金の不安定化は大学の基盤の弱体化につながること、基盤的資金に関わる評価に基づく配分の撤廃・縮小、結果反映を1期遅らせ、先が見通せる資金配分とすること、低偏差値とされる私立大学(男子)の大学教育投資効果(私的内部収益率)は一定水準で存在すること、女子の投資効果はさらに大きいことを指摘、その上で国立大学に関しては、選択と集中の発想の再検討を、私大に関しては大学進学機会の地域間の平等に関わる私学助成金の交付スキームの導入を提案している。最後に私立大学が研究・大学院教育・研究的大学開放機能において果たしている役割など、役割分担が存在することに留意が必要で、複雑でも丹念な現実理解に基づく改革を要請した。

ヒアリング後は、今後の高等教育の在り方について意見交換を行った。

委員からは「人口減少で国力は落ちるが、中間層のボリュームゾーンを前に進めることが必要」「大学間で定員の貸し借りはできないか」「入学者選抜も議論すべきだ」「初等中等教育と高等教育の関わりを話さなくてはいけないとの思いを強くした」などの意見が聞かれた。次回以降は、設置基準について話し合う予定。次回は10月16日に大学分科会と合同して審議を進める予定。