第2回博士人材の民間企業における活躍促進検討会開く

ジョブ型インターンシップの現状

4つの企業が発表、議論

文部科学省は9月26日に第2回博士人材の民間企業における活躍促進に向けた検討会(委員長=川端和重・新潟大学理事・副学長)をオンラインで開催し、企業のインターンシップの取り組みなど4件の報告があった。

山田諒委員(株式会社アカリク代表取締役社長)がジョブ型インターンシップの現状を発表。理工系博士号取得者の採用者の増加を目指し、文科省と経団連はジョブ型インターンシップ推進協議会を2021年に共同設置し、企業と学生のマッチングを進めている。現在、大学98校、企業61社の登録がある。ジョブ型インターンシップは、大学院生を対象とし、原則として2カ月以上かつ有給で正規の教育課程の単位科目として実施される。インターンシップの評価は採用選考に活用できる。2021年度から23年度にはマッチングの成立は62件だったが、参画企業数、マッチング成立件数が伸びていない。参加学生からは「期待を上回る良い経験だ」、受け入れ先の企業からは「期待通り以上」との意見が多かった、と報告した。

大河原久治委員(日立製作所タレントアクイジション部部長)は、博士人材の採用の取り組みを話した。同社では採用にジョブ型を推進している。技術系でジョブマッチングを開始し、約150のジョブ内容を学生に開示、学生の希望と各事業部の採用ニーズを確認し、マッチングが成立した分野に配属が決定され、2021年からジョブ型研究インターンシップを始めた。研究テーマ、テーマに必要なスキルを公開し、学生が応募する。公募テーマ件数、応募人数は増加し、一定人数の採用につながる実績を得ている。長期のインターンシップを通じて精度の高いマッチングを行うことができる一方で、学生のトランスファラブルスキル(どんな場面でも普遍的に使える能力)不足でマッチングがうまくいかず、博士人材の専門性の高さだけでは期待できない点もある、と話した。

髙田雄介委員(中外製薬人事部長)は、博士人材の採用と活躍について触れ、同社の創薬アプローチは、独自開発の革新的な創薬技術を起点し、そのために博士人材の活躍は欠かせず、博士人材には多様性をまとめ上げるリーダーシップ、研究室内外で培ったコミュニケーション能力を期待していると述べた。同社では、2024、23年とも40人の新卒博士人材が入社した。勤務形態は新卒入社者は2年目の7月から裁量労働制をとり、裁量手当は月額6万円。今後の博士人材の採用と活躍の課題として、就職・採用活動の早期化・長期化があり、更なる日本での博士人材の活躍のために社内・業界を超えたネットワークづくりが必要、とした。

大平将一氏(富士通人材採用センター長)は富士通の博士人材の育成について話した。同社には博士号取得支援制度があり、研究員を大学院博士課程に派遣し、専門性を高め、大学との関係を強化し、同社の研究の方向性に沿った研究を通じて博士号を取得する。派遣期間は最大3年で、入学金、授業料などは全額会社が負担する。1998年の開始以来、180人が利用した。また卓越社会人博士制度も設けている。博士前期課程修了の学生を採用し、社会人学生として博士後期課程に進学する。入社後、学生は基本給、賞与を得ながら研究を続け博士号取得後も雇用する。

今後の博士人材の採用は、即戦力人材獲得を強化するために、新卒採用でのジョブ型人材マネジメントを拡大し、専門性のある博士人材の採用拡大を進めたいとした。

4件の報告のあとで行われた審議では、博士人材に求められるトランスファラブルスキルへの議論があった。企業としては、社会課題の解決をするには、リソースを活用しながら発信し、一人で行うのではなく、まわりを巻き込みながら進めていくことが必要であるとし、博士人材は、研究テーマの専門性は高くもっているが、社会実装するための興味、関心は低いのではないか、との意見があった。

大学側の意見として、学生は自分の研究領域と提示されたジョブのマッチングに神経質になっており、拡大解釈できる職務内容の提示があれば応募がしやすい、との発言があった。