大分高等学校の取り組み
DXハイスクール事業を活用し成長分野支える人材育成
ユニットコムの協力でIT環境整備や人材交流を図る
大分県大分市にある高尾山自然公園に隣接する緑豊かな環境で、広い視野を持った社会に有為の人材育成に取り組む大分高等学校は今年度、文部科学省の高等学校DX加速化推進事業(DXハイスクール)の指定校に選ばれた。
これを受け、同校の特進コース(生徒数150人、各学年50人)では同事業の補助を用いて高性能なPC、ICT機器などをそろえたDX教室を整備したことに加え、大学や企業などの専門家を講師に、デジタル技術を用いた社会の変革について学ぶことができる講演を実施。文理横断型の探究的な学びの強化や、デジタル等成長分野を支える理工学系や自然科学系の人材育成に努めている。
同校が同事業を推進することになった背景には、デジタルネイティブと呼ばれる現在の生徒と、その世代ではない教員のデジタル技術活用におけるギャップがある。同校では、このギャップを埋めるために教育現場全体がデジタル技術に適応する必要があると考えた。
学校法人大分高等学校の小山康直理事長は同事業を推進する要因の一つとして「生徒の学びや考え方の多様化で従来の画一的な教育方法では、個々の生徒のニーズに応えることが難しくなっており、個別学習支援や多様な学習スタイルに対応できる環境を整え、生徒が自分のペースで効率良く学べるように取り組むことにした」と話す。
AIが今後、社会で重要な役割を果たすと考えたことも大きなきっかけとなった。将来の職業や生活に不可欠な存在となると見込まれるAIに対して、生徒に使いこなせるというマインドを与えることは、キャリア形成にとって非常に重要なため、AIに対する理解を深め、実際に活用できるスキルを身に付けることができるよう、同事業を進めることとした。
同事業の展開に当たっては、協力機関として、福岡工業大学、東京大学、大分大学、九州大学、大分高専、熊本大学、オリジナルパソコンや周辺機器の販売などを手掛ける㈱ユニットコム(大阪府大阪市)などを選定した。また、大分高等学校と福岡工業大学は7月に同事業の発展に向けて協定を締結した。
DX教室は5月から7月にかけて改修され、プロジェクター、自動昇降スクリーン、高性能PCやICT機器などを導入。ICTを活用する授業、遠隔地の講師などとのオンラインによるやり取り、オープンスクールでのeスポーツの実施などで使われている。同教室のIT環境はユニットコムが整備した。同校情報科教員の竹尾浩先生は同社について「同事業の講演の講師選定にも協力している上に、多様な相談にも対応してもらっている」と述べる。
7月23日には、3年生を対象に同事業の第1回講演「AI×医療」を行った。講師は福岡工業大学情報工学部の徳安達士教授が務めた。徳安教授の研究テーマはAIを用いた次世代外科医療の実現で、講演では、AIがヒトの臓器や病気を判断する方法や、AIが実際の外科手術で果たしている役割などを解説した。
生徒からは「人々の役に立つために大きな情熱をAIに注いでいることに驚いた」「医療の領域でなくてもAIを積極的に活用できないか考えていきたい」「人間とAIの共存のために私がこれから学ぶ学問がどう関われるのか考えたい」といった感想が寄せられた。
今後も協力機関と連携し、講演を実施する。11月13日には東京大学(オンライン)、11月25日には九州大学から講師を迎える予定。
8月には、1、2年生が同事業の一環でIVY大分高度コンピュータ専門学校を訪問し、情報の特別授業を受けた。授業では、進路に関するアドバイスの後、プログラミングを学んだ。
また、生徒たちは10月9日、大分工業高等専門学校の専攻科生の研究発表に参加し、見聞を広めることができた。
特進部の小林業部長(理科教員)は同事業の成果に関して「デジタルへの生徒の関心が確実に高まっている。DX教室を使いたいという生徒も増えている」と話す。
小山統之校長は「今後は同事業における特進コースの授業を進化させるとともに、DX教室を活性化させ、増設し、成果を全校で共有していきたい」との考えを示した。