摂南大学の取り組み

輪島塗復旧支援プロジェクト伝統文化を保護・継承
震災の記憶と持ち主の「想い」つなぐ
摂南大学(大阪府寝屋川市)の能登半島地震で被災した輪島塗の復旧支援プロジェクトは8月23日から8月27日の5日間、石川県能登町にある「春蘭の里」と、宮地交流宿泊所「こぶし」を訪問し、能登半島の伝統工芸品をつなぐ活動を行った。
2025年に開学50周年を迎える同大学は、開学50周年記念事業として「『挑む、楽しむ。』プロジェクト」(愛称:むむプ)を発足した。能登半島地震で被災した輪島塗の復旧支援プロジェクトは「むむプ」の一環で、伝統文化の保護と継承を目指し、被災家屋から持ち出された輪島塗の漆器等を洗浄して新しい持ち主に引き渡すことで震災の記憶と持ち主の「想い」をつなぐ活動となっている。
同大学では東日本大震災をきっかけに「ボランティア活動」という特別講義を立ち上げ、学生の被災地支援を後押ししてきた。今回は能登半島地震からの復興を目指し、学生たちが能登の誇る伝統工芸・輪島塗の保護と継承に取り組んだ。
同大学理工学部住環境デザイン学科の榊愛准教授は「能登半島地震発生後、農家民宿群『春蘭の里』の拠点施設『こぶし』には、周辺の被災家屋等から輪島塗の御膳・お椀などの漆器がたくさん持ち込まれたものの、現地の住民だけでは漆器の整理に手が回らないとの話を聞いた。能登では客人を招いた時の食器として、多くの家庭が飯椀や汁椀、煮物椀などをセットにした膳を継承している。こうしたことから、能登の人々にとって大切な輪島塗を私たちが洗浄・整理して、新たな持ち主に引き継げるように整える活動を計画した」と説明する。
学生は事前学習で能登半島地震や輪島塗について学んだ後、8月下旬の5日間、石川県輪島市に隣接する能登町を訪れた。訪問先の「春蘭の里」は伝統家屋を活用した民宿で外国人観光客にも人気だったが、今回の地震で被害を受けていた。
学生は被災した家屋から持ち出すことのできた輪島塗の器を丁寧に洗い、使い続けることができるよう整理する活動を実施。ただ洗うだけではなく、分担して効率よく進めるためのチームワークとコミュニケーションを大切にした。輪島塗のお椀・御膳を正しく組み合わせるためにパズルを解くような想像力が求められる作業に苦戦しながらも、わずか5日間で275膳もの輪島塗を整理した。
榊准教授は「5日間の活動で、江戸時代の御膳にも大切に使われてきた形跡があることに気付き、少しずつ異なるお椀の形や色に個性の豊かさが表れ、とても愛おしく感じるようになった」と語る。
また、「能登の皆さんにとって大切な品物を洗浄させていただける機会を得たことを改めて有難く思う。今回は9人の学生が参加した。地域に根付く生活や文化、歴史の一端に触れ、能登の豊かな自然と温かな人々に囲まれて過ごした活動は大学内での学びでは得られない貴重な経験になった」と話す。
今後は現地での経験を「輪島塗がつなぐ物語」という冊子にまとめ、被災地の今を多くの人に伝え、支援の輪を広げる予定。