第26回教育データ利活用有識者会議開く

論点案など審議内容整理した報告説明
教育現場から遠い議論との危惧も
文部科学省は11月6日に第26回教育データの利活用に関する有識者会議(座長=堀田龍也・東京学芸大学教職大学院教授)を同省でオンラインも併用して開催した。
文科省から、教育データの利活用の現状、活用ケース例、活用の課題、支援などを検討してきた審議内容を整理した「報告」について説明があった。
目指す方向性としたのは、児童生徒1人1台端末を用いて、誰一人取り残すことなく、全ての子供たちの力を最大限に引き出すことだとし、そのための手段として教育データの効果的な利活用の促進がある、としている。またMEXCBT(文部科学省CBTシステム)を利用できる環境にするために、全ての学校で整備を目指す仕組みや機能は何か、どのデータを重視し、どう活用するかは各自治体がニーズに合わせて選択できる方向性でよいかなど論点の整理案を示した。またニーズに合わせた選択を可能にするためには、既に普及している技術的標準などによりデータ活用を進めることを基本とし、自治体の選択肢が狭められないよう、ハブ的機能を持つサービス(学習eポータルなど)の利用に関し、どのような標準やルールが必要か、なども論点案としている。
さらに関係者の役割分担として、国はMEXCBTと実証用学習eポータルの運用改善、自治体の選択に役立つモデルの提示、実証事業の実施・成果の展開など、各自治体は、より効果的な教育データの利活用の仕組みの整備、民間企業は、各学習リソースの違いや教育データの利活用の仕方を分かりやすく発信するための総合連携・協働、を論点案としている。
こうした論点案に対して、委員からは、データの利活用の進め方は、システムや仕組みの話が中心になってしまい、教育現場からの乖離を危惧する意見が多数あり、「この会議での話し合いがシステムや仕組みの話ばかりで、データの高度化が進めば取り残されるという声が先生たちから出ている。現場の先生たちに分かるような実効性のある仕組みを作るべきだ」「先生たちのやる気がそがれないよう、どんなデータを見るとどんなことが分かるのかといったスモールステップから進めたい」などの意見が出された。
学習eポータルに関しては「全国学力・学習状況調査の全面CBT化が予定されているので、学習eポータルの位置付けを今変えるのは得策ではない」、また現在、文科省の実証用学習eポータルと民間の学習eポータルの2種類で整備されている状況について、民間事業者から「議論は公的領域、民間領域と分けて行いたい。公的領域のMEXCBT関連は全ての学校・自治体への無償提供が継続され、将来的に児童生徒に自治体を越えたIDが発行されることになれば、国が予算を確保し、厳格なルールの下で管理すべき。一方で民間領域は受益者負担とし、データ連携の標準化をして、国で認可・認証する協調領域とダッシュボード機能などで自由に競争でき、収益化を期待できる競争領域で分けて考えたい。現状では民間事業者の負担が大きく、データ活用の持続可能性が望めない」との意見が出された。
一方で「子供たちの力を最大限に引き出すという目的ではなく、事業の継続性という手段が中心の議論になるのには懸念がある」「これまでの議論は学習系データの話題に偏っている。いじめ、不登校など生活・健康系データ、校務系データも一体的に議論が必要」という意見も聞かれた。
堀田座長は最後に「今日はデータ利活用のサステナビリティのために費用負担を含めた議論がされた。複数の委員から教育現場から遠い議論になっているとの指摘があったが、実際にデータ活用を進めたからこそ、費用負担などの問題が浮かび上がり、議論の俎上にあげることができた。教育予算は厳しいものがあり、費用負担に関しては難しい問題だが、安定した運営のために3期目に当たるこの有識者会議で今後決めるべきことを出していきたい」と述べた。このほか、第26回会議では前回会議の振り返りなどが行われた。