埼玉工業大学の取り組み

深谷ねぎの葉の資源化・成形加工技術開発
有効活用で地球環境問題改善に貢献
埼玉工業大学(埼玉県深谷市)は、工学部生命環境化学科(環境物質化学研究室)兼クリーンエネルギー技術開発センター長の本郷照久教授の研究チームと、工学部機械工学科(成形技術研究室)の福島祥夫教授の研究チームが連携して、出荷時に破棄されているネギの葉を資源化し、生成したバイオプラスチック材料を成形加工する技術を開発した。
この技術によって、大量に破棄されているネギの葉を資源として有効に活用することが可能になる。また、石油由来のプラスチック製品のゴミによる海の汚染や海洋生態系への悪影響が問題化する中、この技術が地球環境問題の改善に貢献することが期待できる。
今回、ネギの葉の資源化プロジェクトで、本郷教授の研究チームは環境化学および物質化学の専門家として、ネギの葉からセルロースを抽出する技術を確立した。
ネギの葉から抽出したセルロースはパナソニックプロダクションエンジニアリング㈱(大阪府門真市)の技術協力により、kinari【注】技術を活用して、複合樹脂ペレット化(ネギ由来セルロース:55%、ポリプロピレン:45%)された。
福島教授の研究チームは、成形技術の専門家として、ネギ由来セルロースの複合樹脂を石油由来樹脂と同様に成形する技術を開発。本郷研究室の学生のアイデアを生かし、ネギ由来セルロースの複合樹脂から、「深谷ねぎ」をモチーフにした箸置きを作製した。
深谷市は「深谷ねぎ」の産地として全国的に有名で、年間約3万トンを出荷する日本一の生産地となっている。「深谷ねぎ」は収穫後、専用の段ボールに梱包して出荷され、販売店の店頭に並ぶ。
その際、長さを規格(55センチ、または60センチ)に合わせるため、先端の葉が切り落とされる。深谷市で切り落とされるネギの葉は年間約6300トンと概算され、大部分が畑に破棄されている。破棄されたネギの葉は腐敗すると悪臭が発生するため、農家の悩みとなっている。
その対策として、大量に破棄される作物残渣である、ネギの葉を有効利用するための技術開発が望まれていた。今回の技術開発によって、これまで利用されていなかった切断されたネギの葉の再生可能資源として活用が期待されている。
同大学の環境物質化学研究室は物質化学の知恵や技術を使って、SDGsの達成を目指した研究を行っており、地球温暖化問題、環境汚染問題などの解決に取り組んでいる。成形技術研究室はプラスチック成形加工技術を基軸に、機械設計技術での金型製作などを研究し、企業が求めているスマートものづくりを理解した人材を育成している。
同大学では今回、工業大学として、化学系と機械系の専門技術を組み合わせて、民間企業の協力により地元の農業の環境問題に産学連携プロジェクトで対応。今後も、ゴミの発生量を抑制(リデュース)、再使用(リユース)、再生利用(リサイクル)を推進する循環型社会に貢献していく。
【注】パナソニックホールディングス㈱が開発した、植物繊維をベースにしたサステナブルな素材。従来の石油由来樹脂とほぼ同じ性質を持ちながら、基本的には植物繊維でできている。