政府が総合経済対策を決定

令和6年度補正予算案閣議決定文科省は約9千億円
私立学校防災機能強化に113億円
政府は11月22日、「国民の安心・安全と持続的な成長に向けた総合経済対策」を決め、同29日には総合経済対策を実施するための令和6年度補正予算案を閣議決定した。うち文部科学省予算は総額で9067億円。
総合経済対策が掲げる3本柱のうち、第1の柱の「日本経済・地方経済の成長」では、文科省関連としては、(1)人への投資の促進等、(2)文化芸術・スポーツの振興等、(3)科学技術の振興及びイノベーションの促進等、(4)DXの推進を実施。第3の柱の「国民の安心・安全の確保」では、(5)自然災害からの復旧・復興、(6)防災・減災及び国土強靱化の推進、(7)「誰一人取り残されない社会」の実現(公教育の再生を始めとする学びの支援等)を重点的に進める。第2の柱は物価高の克服で、文科省補正予算案に関連事業は盛り込まれていない。
このうち、(1)の人への投資の促進等では、産業界・個人・大学等によるリカレント教育エコシステム構築を支援(21億円)、(2)の文化芸術・スポーツの振興等では、図書館・学校図書館と地域の連携協働による読書のまちづくりの推進(0.5億円)、(3)の科学技術の振興及びイノベーションの促進等では科研費の国際性・若手研究者支援の強化(基金)(52億円)、大学病院の高度医療人材養成・研究力向上(基金を含む)(184億円)、大学等における半導体研究や人材育成機能を強化する基盤となる教育研究設備整備の推進(76億円)、宇宙分野の研究開発推進(600億円)、宇宙戦略基金の拡充(基金)(総務省、経済産業省でも関連予算を計上)(1550億円)、大学・高専等における教育研究基盤の強化等(379億円)が盛り込まれている。この中には成長分野をけん引する私立学校の教育研究環境の高度化に16億円が計上されている。事業内容は私立大学等の多様で特色ある成長分野(AI、バイオ、マテリアル、半導体、6G、健康・医療等)の教育研究環境を一層高度化し、研究開発成果の社会実装を加速化する。校内LANの整備も推進する。補助率は大学等が1/2以内(研究設備のみ2/3以内)、高校等は1/3以内等。
(4)のDXの推進では、国策のGIGAスクール構想を着実に実施するための1人1台端末の着実な更新、AIの活用による英語教育など初等中等教育におけるデジタル人材育成等の強化(基金を含む)(383億円)、教育DXの推進に向けMEXCBTの機能拡充や教育データ利活用の加速化など教育DXを支える基盤的ツールや各種システムの整備・活用(71億円)、専修学校における教育環境等整備(2億円)などの事業を実施する。この中には高等学校DX加速化推進事業(DXハイスクール)事業も盛り込まれており、予算額は74億円。公私立高校等1170校程度を支援する計画。継続校970校には1校当たり500万円(重点類型は700万円)、新規採択校には1校当たり1000万円(同1200万円)を定額補助する。
(5)の自然災害からの復旧・復興では令和6年能登半島地震やその後の豪雨等で甚大な被害を受けた学校施設・設備等の災害復旧等を迅速に進める。私立学校に関しては29億円(私立学校施設の災害復旧14億円、私立学校教育研究活動復旧費6億円、私立大学等の学生に対する授業料減免等9億円)が手当てされる。
(6)の防災・減災及び国土強靱化の推進では、学校施設等の整備に2883億円が充てられる。
私立学校分はそのうち113億円(初等中等教育局計上の「私立幼稚園の施設整備支援」23億円を含む)で、非構造部材(吊り天井・外壁など)の耐震対策、構造体の耐震化、避難所機能の強化策としてバリアフリー化、備蓄倉庫、空調設備、自家発電設備、屋外防災施設照明設備のLED化、熱中症対策として空調設備・換気設備、学校安全対策として防犯対策、アスベスト対策を進める。
補助率は大学等が1/2以内、高校等は1/3以内で、高校等の耐震補強・防犯対策の一部の補助率を嵩上げする。
(7)の「誰一人取り残されない社会」の実現(公教育の再生を始めとする学びの支援等)では、不登校・いじめ対策等の推進に4億円を、教員研修の高度化や研修環境等整備に2億円、部活動の地域連携や地域クラブ活動への移行に29億円、在外教育施設における教育環境等整備に5億円、教育課程の改善・充実に向けた全国学力・学習状況調査のCBT化等に10億円が充てられる。