第13回高等教育の在り方特別部会開催

答申案を審議 “規模の見直しは不可避”

複数委員から機関補助充実求める意見

中央教育審議会大学分科会の高等教育の在り方に関する特別部会(部会長=永田恭介・筑波大学学長)は12月4日、文部科学省でオンラインを併用して第13回部会を開催した。この日の議題は、答申案「急速な少子化が進行する中での将来社会を見据えた高等教育の在り方について」を審議すること。

同特別部会は、昨年11月下旬に審議を開始、今年7月18日に開いた第8回部会で合意した審議の「中間まとめ」を8月8日に公表、その後、関係団体からのヒアリングを実施、部会で審議を重ねた結果、中間まとめの構成を一部見直すとともに、様々な箇所で新たな加筆を行った。

答申案の主な内容は、今後の高等教育の目指すべき姿、今後の高等教育政策の方向性と具体的方策、機関別・設置者別の役割や連携の在り方、高等教育改革を支える支援方策の在り方。

このうち今後の高等教育政策の方向性と具体的方策に関しては、わが国の知の総和を向上させていくためには教育研究の「質」の更なる高度化が重要だとし、設置基準や設置認可審査の見直し等が必要だと指摘。設置認可審査では従来の学問分野に収まらない分野の審査を行う体制の整備、また認証評価制度に関しては学生が在学中にどれくらい力を伸ばすことができたのか、といった大学等の教育の質を数段階で示し公表するなど、新たな評価制度へ円滑に移行するための制度改善、さらに大学院教育の改革では、当面は多くの人が修士卒で就職を希望する自然科学系で博士課程進学者の増加を図り、多くが学部卒で就職を希望する人文・社会科学系では修士課程進学者の増加を図ることを求めている。

高等教育全体の「規模」の適正化に関しては、意欲的な教育・経営改革を行うため、一定の学士課程定員の規模を縮小しつつ、質の向上と連動して規模縮小を実施する大学、学内資源を学部から大学院へシフトする大学、質を確保した上で留学生や社会人を増加する大学等に対する支援を行うこと、高等教育機関間の連携を推進するため地域連携プラットフォームの仕組みを発展させ、各地域におけるアクセス確保策や人材育成の在り方について議論する協議体(地域大学等構想推進プラットフォーム:仮称)を構築すること、大学等連携推進法人制度を発展させ、連携開設科目の設置に留まらない活用を支援し、大学等連携を緊密に行うための仕組み(地域大学等連携推進機構:仮称)の導入や支援策の検討を行うことを提言している。

また大学等の再編・統合を推進するとともに、縮小・撤退への支援については、答申案で縮小と撤退に関する記述を分け、縮小に対しては、学内資源を学部から大学院へシフトすることや、早期の経営判断を促す指導を拡大・強化、私学助成の交付要件として経営改善に関する計画の策定を義務付け、進捗状況等を配分に反映させる。

撤退に関しても縮小と同様に早期の経営判断を促し、私学助成の面でも計画の進捗状況等を配分に反映。学校法人が解散する場合等における在学生の卒業までの学修環境確保等の学生保護の仕組み、卒業生・修了生の学籍情報の管理方策の構築や残余財産の帰属の要件緩和のための制度改善を行うことを提言している。アクセスに関しては前述の2つの協議体の必要性を指摘するとともに、また地方創生の観点からも東京都や京都府など大学進学者収容力が100%を超える地域の学士課程定員を縮減し、都道府県格差の縮小を目指す方針。また都市部と地方との間では高等教育機関間の編入学、大都市圏の高等教育機関の学生の国内留学やサテライトキャンパスの設置、キャンパス移転の取り組みを支援する。

機関別・設置者別の役割や連携の在り方では、短大の専攻科修了者の大学院への進学ニーズ等を含め、短期大学制度の改善の検討を行うとしている。設置者別の役割のうち国立大学に関しては、今後の18歳人口減少や地域の高等教育へのアクセス確保と知の高度化、社会のニーズの必要性を踏まえて、学士課程、修士・博士課程の定員の適正化について検討する、としており、私立大学に関しては、国立、公立大学と共に、今後更なる少子化を見据えた規模の見直しは不可避などとしている。

また高等教育改革を支える支援方策の在り方に関しては、高等教育に対する投資は未来への先行投資だとし、公財政支援、社会からの投資等、個人・保護者負担について高等教育の持続可能な発展に資する規模・仕組みを確保することが必要と指摘している。

今後取るべき方策については、短期的な取り組みとして公財政支援の充実、企業による奨学金代理返還制度の活用、個人・保護者負担の在り方に関しては機関補助とのバランスを勘案しつつ検討すること、中期的取り組みにとしては、教育コストの算定基準を策定、基準に基づく授業料等の学納金の最低ラインの設定や、公的支援の仕組みの見直しに向けた検討、高等教育によって得られる将来的な便益も踏まえた税の在り方や寄附の充実等、多様な財源の確保に向けた検討を行うとしている。

こうした答申案に対して、特別部会の委員からはさまざま意見が出された。永田部会長は、とりわけ規模の縮小に関して、「定員が減るが、同時に増やす方策も考え、定員の100%が80%になっても外国人留学生は定員の外枠で取ってもいい、といったことや、社会人も同様に扱うなども考えられることなどに言及。また慶應義塾の伊藤公平塾長は「答申案に異論はないが、日本社会を支えるのは平均的な人たちで、そうした人達がハッピーになることが必要。勝ち組だけではだめ」と語り、大森昭生・共愛学園前橋国際大学・短期大学部学長は「トップ人材だけではなく、分厚い中間層が高等教育の価値であり、社会人に関してはフルタイムなのかパートタイム学生なのかで違いがある。議論の余地を残す必要がある」と、また大野博之・国際学院埼玉短期大学理事長・学長は「誰ひとり取り残さないよう国民全体が高等教育を目指すべきだ」と話した。

両角亜希子・東京大学大学院教育学研究科教授は、「パートタイム学生でも大学、大学院に受け入れることが大事で、フルタイム換算が必要。縮小と撤退に分けたことはいいが、撤退についてはまともに議論していない。地域で必要な人材を育成しているのに違う形で首を絞めて撤退している。どういう条件で撤退を促していくのか、はっきりすべきだ」と語り、吉見俊哉・國學院大學観光街づくり学部教授は「首都圏1都3県に3600、3700万人の人口が集中している。地理的な再配分が必要。これを直す以外に地方創生はない」と語った。

そのほか個人に対する修学支援措置が充実してきた一方で、機関補助は伸びず、大学の教育研究を圧迫しているといった指摘が複数委員から聞かれた。次回は12月13日開催。