文部科学省 令和7年度概算要求提出(2)
大学等の学生や高校等生徒
多子世帯への支援充実
文部科学省は8月29日に令和7年度概算要求を公表した。9月3日号では私学助成関係予算要求を中心に報告したが、今号では大学等や高校等に関する修学支援措置の要求事項や要求額について報告する。
このうち高等教育の修学支援については、こども家庭庁計上予算も含め、要求額を示さず、年末までの次年度予算案編成作業の中で決めていく「事項要求」となっている。令和6年度の予算額は6412億円。高等教育の修学支援新制度は令和2年4月から始まった制度で、授業料等減免(国が各学校に交付)と給付型奨学金(日本学生支援機構が各学生等に支給)からなっている。対象は大学・短期大学・高等専門学校(4・5年生)・専門学校の学生等で、住民税非課税世帯及びそれに準ずる世帯(世帯年収目安600万円程度まで)の学生等について、給付型奨学金と授業料減免をセットして支給する。所得に応じて上限額の満額、2/3、1/3、1/4が支給される。令和7年度からは子供を3人以上扶養する多子世帯の学生等について授業料等を上限額まで所得制限なく無償化する。私立大学の場合の授業料等減免の上限額は、入学金が26万円、授業料が70万円(年額)。給付型奨学金は私立大学に通う自宅外生の場合、年額91万円。
こうした授業料等支援等を受けるには、学生に関して、進学前に成績だけで否定的な判断をせず、リポート等で本人の学習意欲を確認することや、大学等に進学後は学修状況に厳しい要件が課される。またそうした学生の進学先として認められるためには大学等にも機関要件が課され、経営課題のある法人の設置する大学等は対象外となる。そのほか日本学生支援機構による貸与型奨学金・授業料後払い制度もあり、貸与基準を満たす希望者全員に貸与を確実に実施する。そのほか年収が300万円以下の場合、返還期限を猶予する制度、年収が400万円に届かない場合、返還金額を最大4分の1に減額できる制度もある。
一方、高校等に関しては、高校等就学支援金等と高校生等奨学給付金が設けられており、前者の令和7年度要求額は、前年度とほぼ同額の4089億円、後者については前年度18億円増の165億円が要求されている。
高等学校等就学支援金等は年収910万円未満の世帯の生徒に基本年額11万8800円が支給されるが、私立高校等の生徒については39万6000円(私立高校の平均授業料を勘案した水準)まで支援する。私立高校等の通信制課程に通う年収590万円未満の世帯の場合、支給上限額は29万7000円。これらは国が全額(10/10)を負担する事業。
一方、高校生等奨学給付金は都道府県が実施主体となる事業で国の補助割合は1/3、都道府県が2/3。対象は高校、中等教育学校(後期課程)、高専(1~3年)専修学校(高等課程)等。給付額は令和7年度要求では、例えば非課税世帯の全日制私立高校に通う第1子には前年度比9400円増の15万2000円、同じ条件の国公立高校生には14万3700円が支給される(前年度比2万1600円増)、全日制高校に通う第2子以降も同額が支給される。また新たに年収約270万円以上から約380万円未満の世帯の高校生等にも対象が広げられ、非課税世帯への給付額の1/5の支給実現を要求している。高校等就学支援金制度では家計急変世帯への支援も実施している。また高校等の専攻科の生徒への就学支援については、前年度比1億円増の5億円を要求している。この事業の実施主体は都道府県とされており、国は授業料に関しては1/2、授業料以外の教育費については1/3を補助する。生徒一人当たり補助対象上限額は、住民税非課税世帯で私立高校専攻科に通う場合、授業料支援で42万7200円、授業料以外支援で5万2100円、世帯年収270万円から380万円では授業料で21万3600円、それ以外で1万420円、多子世帯(扶養される子供が3人以上の世帯)では、所得制限なく、授業料で42万7200円、授業料以外(年収目安380万円から600万円未満世帯)で1万420円としている。