第15回 今後の教育課程等有識者検討会開く

「論点整理案」を審議、了承

文部科学省は9月17日に第15回今後の教育課程、学習指導及び学習評価等の在り方に関する有識者検討会(座長=天笠茂・千葉大学名誉教授)を対面とウェブを併用して開催した。前回会議で示された論点整理の骨子に、委員の意見などを取り入れた論点整理案が同省から示された。論点整理案は、(1)これからの社会像とこれまでの学習指導要領の趣旨の実現状況、(2)これからの社会像や現状の課題を踏まえた資質・能力、(3)各教科等の目標・内容、方法、評価、(4)多様な個性や特性、背景を有する子供たちを包摂する柔軟な教育課程、(5)学習指導要領の趣旨の着実な実現を担保する方策や条件整備、(6)学習指導要領の趣旨の実現に向けた政策形成・展開に整理されている。

学校の本質的な役割については、学校は全人的な発達・成長を保障し、居場所、セーフティネットとしての福祉的役割を持ち、民主的・公正な社会を実現する基盤として重要としている。増加する不登校児童生徒や多様な子供たちを包摂するために、学校教育を改善する観点から学習指導要領の在り方を考えることにも言及。また教育課程を実施する際の負担が指摘されており、厚い教科書、入試、教師用指導書などの実態を捉えて検討すべき、としている。

デジタル学習基盤には、体験活動の充実をはじめとして、デジタルとリアルのバランスを取りながら資質・能力の育成に取り組む留意が必要であり、生成AIの導入は、生成AIを用いた教育が資質・能力の在り方や教育方法にどんな影響を及ぼすのかを踏まえて教育への導入を検討することと、述べている。

不登校児童生徒など、個別の指導や特別な配慮を要する子供への指導は、良さを伸ばす視点で考えることが重要で、包摂が特に難しい子供には、環境整備の在り方も検討すべきだと指摘。学習指導要領の趣旨の実現には、学校現場での過度な負担を防ぐために学習指導要領の分量を減らす、教職員数を増やすという教育環境のいずれかで全てを解決できるわけではなく、教育課程と教育環境整備が全体として機能するようにすべきで、その上で総授業時数は現在以上に増やさない検討が必要だ、としている。さらに社会に開かれた教育課程を持続可能な形で実現できるようコミュニティ・スクールの充実など、地域と学校、産学官と学校の連携促進方策を検討する。

現行学習指導要領には「学びに向かう力、人間性等」のように多義に解釈される用語があり、誤解を招いている場合がある。用語解説をするなどして用語間の関係や関連性など全体の構造を分かりやすくする方法を検討すべき、としている。

学習指導要領の改訂の審議の最中でも審議状況をウェブサイトや動画などで積極的に発信し、改訂プロセスを通じて子供や保護者など多くの関係者、学校や教育委員会と趣旨や内容を共有しつつ、浸透を図ることが重要だと指摘している。

この論点整理案に関して委員からは、「条件整備まで踏み込んで書かれているので本気度が見える」「公教育の責任が明確になった」「学習指導要領には専門用語が散りばめられ、意味が分からないと学校は動けないし、教育委員会に質問しても分からないという現状があり、出された後も趣旨が伝わる努力を示すことは評価できる」「学びや育ちは学校だけで担うものではなく、民間機関、NPOなど学校以外のリソースとの連携が必要。社会としてどんな学習環境が準備できるのか、今後の議論に期待したい」など、評価する意見が多く聞かれた。

論点整理案は委員から同意を得て、修文は座長一任とされ、その後公表されることになった。今回で同検討会は最終回となり、望月禎・初等中等教育局長があいさつし、「教育課程の在り方の論議は、学校の在り方、公教育そのものの論議につながる。委員の皆さんの多角的な視点から議論が深まった。今後の政策に活かしていきたい」と述べた。