第4回デジタル人材育成推進協議会開催

文科省、経産省の政策動向等報告

人文系学部等での育成重要との意見も

文部科学省と経済産業省が開催する「デジタル人材育成推進協議会」の第4回会議がオンラインで開かれ、デジタル人材育成に関する両省の政策動向や芝浦工業大学等の産学官・高大連携による人材育成の取り組み等が報告され、大学・高等専門学校のデジタル人材育成機能の強化策等について意見交換が行われた。

同協議会は、四つの経済団体や国公私立大学団体、独立行政法人国立高等専門学校機構、全国知事会、独立行政法人情報処理推進機構等の代表者ら11人の委員に、文科省高等教育局長、経産省商務情報政策局長が加わり令和4年9月の第1回から年に1回程度の頻度で開催されている会議体。

デジタル人材については、わが国の未来をけん引する人材として、令和4年6月の政府の「骨太の方針」で令和8年度末までにデジタル推進人材を230万人育成する取り組みを進めるとの方針を表明。デジタル、グリーンなど成長分野への大学等の再編促進、産学官連携強化、大学等における理系分野を学ぶ学生の割合をOECD諸国で最も高い水準の5割程度にまで引き上げることを目標に、今後、5~10年程度の期間に集中的に意欲ある大学の主体性を生かした取り組みを推進する方針だ。そうした方針に沿って進められている両省の施策やその進捗状況、大学・高専での優れたデジタル人材育成事業等が報告され、委員から様々な意見が出され、両省が意見を事業展開の参考にするといったことが行われている。

第4回協議会では、初めに文科省高等教育局から令和4年度第2次補正予算に盛り込まれた「大学・高専機能強化支援事業(成長分野をけん引する大学・高専の機能強化に向けた基金)(予算額3002億円)の初回と第2回の公募では、支援1(=学部再編等による特定成長分野への転換等に係る支援)で公私立大学126校が選定され、支援2(=高度情報専門人材の確保に向けた機能強化に係る支援)では、国公私立大学、高専計89校が選定されたこと、また数理・データサイエンス・AI教育プログラム認定制度では令和7年度の育成目標のうち、リテラシーレベルでは、1学年当たり受講可能な学生数が約50万人となり、目標を達成。応用基礎レベルでは年25万人の目標に対して高校の一部を加え1学年当たりの学生数が約19万人に達したが、なおポテンシャルのある大学も残っていることなどが報告された。初等中等教育局からは高等学校DX加速化推進事業(DXハイスクール)の初年度の採択状況(公私立高校等で1010校)や普通科、職業学科での取り組み、大学との連携の取り組み、大学によるDXハイスクール支援の取り組み等が報告された。

経産省からは、全国共通のデジタルスキル標準を基盤として、情報処理技術者試験を通して、産業別(半導体・蓄電池等)に必要な人材像、スキルを整理して産学官連携による人材育成を地域ごとに進めていく方針で、人材育成に関する最新の取り組み状況、トップIT人材の育成に関する取り組み等が報告された。

続いて芝浦工業大学からは、現在、設置構想中の理工学系教育改革のための具体的施策(学科の縦割り構造の見直し、理工学共通基礎の情報教育、分野横断型の専門教育、学科制から課程制へ)や、令和6年度から埼玉県立高校のDXハイスクール事業へ支援を始めたこと、平成25年度から開始した「女性の多い理工系大学」を目指した取り組み(理工系女子特別入試、女子高校との連携協定締結等)により現在、女子学生比率が26.6%となり、成果を上げていることなどが報告された。

こうした報告に対して、日本私立大学団体連合会の田中愛治会長(早稲田大学総長)から、「デジタルは理工系の人がやるという神話があるが、文系の事務方がデータ扱えないのは致命的。文系でもビックデータ分析ができるようにならなくてはいけない。(デジタル人材は)文系も含め広く養成することが必要」との発言があり、別の複数の委員からも「情報系以外の人材にもきちんとした手当てが必要」など文理の垣根を越えての人材育成の重要性が指摘された。また小学生などもっと早い段階での取り組み、戸田市教育委員会が進めるSTEAM教育の全国展開、東京23区での大学の定員抑制の見直しを求める意見が聞かれた。そのほか国立大学協会からは、「高大連携、高校に対してどれだけサポートしていけるか国大協も意識しており、情報処理学会も真剣に考えている。文科省はDXハイスクールの予算獲得に更なる尽力を」との意見も出された。