新しい資本主義のグランドデザイン等決定

中間層の理工農系学生に経済的支援を拡大

政府は6月16日、経済財政諮問会議(議長=岸田文雄総理大臣)・新しい資本主義実現会議(同)合同会議を総理官邸で開き、「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画2023改訂版」「成長戦略等のフォローアップ」と「経済財政運営と改革の基本方針2023」を取りまとめた。その後、持ち回り閣議で決定されている。これらは岸田内閣の成長戦略や経済財政運営の基本方針、今後重視する政策の方向性等を示すもので、教育関連では官民連携による科学技術・イノベーションの推進やスタートアップ創出に向けた人材・ネットワークの構築、デジタル人材の育成、GIGAスクールの推進、キャリア教育の充実、高等教育費の負担軽減などが盛り込まれている。

このうち「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画2023改訂版」は約100ページの報告書。

そのうち多様性の尊重と格差の是正に関しては、キャリア教育の充実策として小・中・高校の総合的学習の時間において実施方法や事例を周知、また教育課程外の取り組みも含めて起業家教育の充実を図ること、大学や専門学校等において企業活動と一体的な教育研究を促進することにより、研究の社会実装と世界で戦う上で必要な高度人材育成を両輪で進める。

また授業料等減免、給付型奨学金により低所得世帯の高校生の大学進学率の向上を図り、特に来年度から多子世帯や理工農系の学生の中間層(世帯収入約600万円)に対象を拡大、多子世帯の学生等に対する授業料減免についてさらなる支援拡充(対象年収の拡大、年収区分ごとの支援割合の引き上げ等)を検討、必要な措置を講ずる方針。

また授業料後払い制度について、まず令和6年度から修士段階の学生を対象に導入、本格導入に向け更に検討を進める、としている。

官民連携による科学技術・イノベーションの推進に関しては、世界に伍する研究大学を作るため10兆円規模の大学ファンドを活用して支援。支援対象大学は令和5年度から段階的に審査を行い、令和6年度中に支援を開始する。また地域中核・特色ある研究大学の総合振興のため、大学の強みや特色を伸ばす取り組みを支援する。そのほか若手研究者の研究環境を改善、女子中高生のIT分野や理工系分野の選択促進を進める。

スタートアップ創出に向けた人材・ネットワークの構築に関しては、海外トップ大学の誘致・優秀な研究者の招へい等により官民の資金導入によるグローバルスタートアップキャンパスを東京都心に創設する。米国のMITなどが候補に挙がっている。また米国との連携による起業家育成プログラムを実施、全国各地の研究大学は「1大学につき50社起業し、1社はエグジットを目指そう」という運動を展開する。エグジットは利益を得ること。さらに中高生について中長期的に留学支援の拡充を目指す。

このほかデジタル人材の育成、GIGAスクール構想を推進する。

また「成長戦略のフォローアップ」では探究・STEAM教育の強化、教育環境の整備等を進める。このうち後者に関しては学校における働き方改革をさらに加速し、教師の処遇改善について検討を行い、結論を得て所要の措置を講ずる。

一方、「経済財政運営と改革の基本方針2023」では「第1章 マクロ経済運営の基本的考え方」、「第2章 新しい資本主義の加速」、「第3章 我が国を取り巻く環境変化への対応」、「第4章 中長期の経済財政運営」、「第5章 当面の経済財政運営と令和6年度予算編成に向けた考え方」からなっており、三位一体の労働市場改革による構造的賃上げの実現と「人への投資」の強化、分厚い中間層の形成、投資の拡大と経済社会改革の実行、少子化対策・こども政策の抜本強化、包摂社会の実現、地域・中小企業の活性化を重点施策に据えている。

このうち第2章の中の「官民連携を通じた科学技術・イノベーションの推進」では、進学者のニーズ等も踏まえた成長分野への学部再編等(国立大学法人における情報系学部定員の柔軟化、必要教員数の算入方法の柔軟化を踏まえた実務家教員の登用促進等)、文理横断的な大学入学者選抜・SSH等による学びの転換の促進、産学官連携によるキャンパスの共創拠点化等)等を実施するとしている。

また第2章の中の「少子化対策・こども政策の抜本強化」では、こども家庭庁予算で見て、2030年代初頭までに、国の予算または子供1人当たりでみた国の予算の倍増を目指すとしている。