第7回高等学校教育の在り方WG開催
遠隔授業の在り方など焦点
8月中に「中間まとめ」策定
中央教育審議会初等中等教育分科会の個別最適な学びと協働的な学びの一体的な充実に向けた学校教育育の在り方に関する特別部会の下に置かれている「高等学校教育の在り方ワーキンググループ」(主査=荒瀬克己・独立行政法人教職員支援機構理事長、以下WG)は6月30日、第7回会議をオンラインと対面のハイブリッド方式で開催した。
この日は、中教審が今年3月に第12期となって以降初のWG。今年2月に、過去6回の会議における議論内容が「論点整理」としてまとめられているが、今後、7月21日開催の第8回、8月24日開催の第9回を経て8月中に審議の「中間まとめ」が策定される予定。その際、義務教育のWGと足並みを揃える意向。
2月の「論点整理」では、中教審での審議状況や、これまでに指摘されている課題等から、(1)「共通性」と「多様性」の観点からの高等学校教育の在り方、(2)少子化が加速する地域における高等学校教育の在り方、(3)全日制・定時制・通信制の望ましい在り方、(4)社会に開かれた教育課程の実現、探求・文理横断・実践的な学びの推進を柱に、今後議論を深めていくべき複数の論点が示されたが、第7回会議では、『多様な生徒が学ぶ高等学校のこれからの在り方について』を中心に議論が進められた。この文書は事務局(文部科学省)が提示したもの。その中ではいずれの高等学校の、いずれの課程・学科にあっても、共通して取り組むべき特に重要なこととして、▽自己を理解し、自己決定・自己調整ができる力の育成▽自ら問いを立て、多様な他者と協働しつつ、その問いに対する自分なりの答えを導き出し、行動することのできる力の育成▽自己の在り方生き方を考え、社会に当事者として主体的に参画する力の育成▽それらの土台となる知・徳・体のバランスの取れた資質・能力の育成(とりわけ義務教育段階において修得すべき資質・能力の確実な育成)の4点を列挙。
その上で教育課程の在り方としては、▽生徒が自己の在り方を考え、主体的に社会と関わったり、自ら学びを調整したり自己決定したりする場面を積極的に取り入れること▽生徒が各教科等の学びで修得した資質・能力を相互に関連付け、生かしながら、実りある探究活動を進めることができるよう、「総合的な探究の時間」を教育課程の基軸に据えて各教科・科目との相互作用を強めていくことの2点の重要性を指摘している。
こうした学びの充実に向けては、教師の資質能力の向上や指導側の体制・環境整備、高校教育に与える影響の大きい大学入学者選抜の改革等を併せて進めていく重要性に言及。授業における探究的な学びをデザインできるよう、全ての教師に校務DX等の働き方改革等を進めながら、継続的な学びの契機と機会を提供する環境整備を進め、コーディネーターの配置促進、大学入学者選抜で志願者の思考力・判断力・表現力等を適切に評価することを指摘している。
一方、多様化への対応としては、地理的状況や学校・課程・学科の枠に関わらずいずれの高校でも柔軟で質の高い学びを実現するため、遠隔授業や通信の方法による教育の活用、学校間連携の促進、関係機関等との連携・協働等が特に有効としており、具体的には、▽実施要件の緩和等を通じた、教科・科目充実型の遠隔授業の推進、特別な事情を有する生徒の学習機会の確保に向けた、自宅等での同時双方向のオンライン授業の受講や、全日制・定時制課程における通信教育の実施要件の緩和等、学校間連携・課程間併修を促進する高等学校間ネットワークの強化、優良事例創出に向けた支援▽コーディネーターの配置促進の5点が重要だ、としている。これらの実現によって「生徒を主語にした」高等学校教育への転換に大きな期待感を滲ませている。
こうした文科省からの提案に、委員からは「生徒にどのようなニーズがあるのか調査が必要」との意見が出されたが、「知識や経験不足から生徒本人も進路希望を持てないでいる」という意見も聞かれた。また「学校が全てのニーズに対応するのは無理。学外のさまざま機関との連携が論じられるべきだ」「社会の変化で職業もどんどん変わる。レジリエンス、希望を持ち続ける力、学び続ける力が大切」「オンラインでも人が人と学ぶことを考えていかなければならない」「同時双方向の遠隔授業はかなり対面授業に近くなってきている。配信センターの法的な位置付けをはっきりしてほしい」「遠隔授業で学べること、対面でしか学べないものについてしっかり議論すべきだ」といった意見が聞かれた。
そのほか「今後、教科書のデジタル化などによりICTを活用した学びにどんどん変わっていくと思う。CBTで評価できる仕組みももうそこまで来ていると思う。学んでいる到達度が測れないといけない」、といった意見も出された。