文科省が令和6年度概算要求
新規事業要 地域教員希望枠を活用した教員養成大学機能強化
学校、学科等の垣根超える高校改革推進
文部科学省の令和6年度概算要求のうち、私学助成関係予算の要求状況については9月3日号で概要を報告したが、今号では、(1)新規要求の中から「地域教員希望枠を活用した教員養成大学・学部の機能強化」や「大学病院改革の推進」「各学校・課程・学科の垣根を超える高等学校改革推進事業」など、私立学校にも関係する主な新規事業、(2)生徒・学生に対する修学支援措置の要求状況を報告する。
【地域教員希望枠を活用した教員養成大学・学部の機能強化事業】(要求額17億円)
近年、学校現場での教員不足は深刻で、新規学卒者の教員(小中高校)採用試験受験者数は2013年の約4万8千人から2022年には約4万人に低下、教員採用倍率も2000年の中学校17・9倍から2022年には4・7倍に低下している。全国的な教育水準の維持・向上に資する教師養成をミッションとする教員養成学部・大学と教育委員会が連携・協働した教員養成の取り組み強化に係る経費を一定期間支援。大学入学者選抜における地域教員希望枠の導入や地域課題に対応したコース・カリキュラムの構築、高校生に対する特別プログラム構築・拡充、大学における地域貢献機能を充実する。
支援対象は教職課程を置く各国公私立大学で、単独事業として25箇所、補助単価は4千万円(上限)、複数大学連携事業としては10箇所、補助単価は7千万円(上限)。補助期間は令和6~10年度(最長5年)で事業3年目に中間評価がある。そのほか申請要件が設けられる予定。
【大学病院改革の推進】(要求額120億円)
令和6年度から医師の時間外・休日労働の上限規制が適用されるため、大学病院においても、働き方改革を進め、適正な労働環境の整備が必須。しかし同時に大学病院が質の高い医療や医療人材を地域に提供するためには教育(高度な医療人材の育成)や研究(医療技術開発、創薬等)機能の維持も不可欠のため、業務の効率化や地域の医療機関との機能分化等による運営改革、人員構造改革(長時間労働短縮のための医師確保等)、教育・研究改革に取り組んだ上で、持続可能な大学病院経営を実現するための財務構造改革(共同研究等の推進、知的財産の獲得・活用、寄附金収入の拡充等)を進めていく。
そのため大学病院に対して改革プランの策定を促し、改革に向けた取り組みに対して支援するのがこの新規事業。支援規模は年に120億円。支援額は1大学当たり年間3億円(上限)で、人件費、設備整備費、事業費として使用することが出来るが、施設整備費は必要所要額の5割以下となる。支援対象は医学部を置く国公私立大学のうち、改革プランを策定し、改革に向けた取り組みを積極的に実施する大学で、支援期間は令和6年度から令和11年度までの6年間。
【各学校・課程・学科の垣根を超える高等学校改革推進事業】(要求額1・9億円)
離島・中山間地域等の学校の立地、リソース等に伴う制約により、学校が生徒の多様な学習ニーズに対応しきれない等の課題がある。そこで地理的状況や各学校・課程・学科の枠に関わらず、いずれの高校においても生徒の多様な学習ニーズに応える柔軟で質の高い学びを実現し、全ての生徒の可能性を最大限引き出す。
具体的には、(1)遠隔・通信等も活用した、学びの機会の充実ネットワークを構築するため、学校間の連携・併修ネットワークを構築する事例を創出、当該中心拠点における機材整備、中心拠点に配置され、各生徒の原籍校との間の連絡調整業務を担う者の配置に係る費用、遠隔教育の受信側原籍校に配置されるスタッフの人材育成・確保に係る費用を支援する。(2)都道府県の枠組みを超えた複数の高校により構成される学校群ネットワークを構築する。ネットワークでの取り組みに係る経費の他、ネットワークが定着・自走するまでの間、各校に配置される連絡調整スタッフや外部アドバイザーへの人件費・謝金等を支援する。対象校種は国公私立高校で、委託先は(1)が都道府県・市町村教育委員会、国立大学法人、学校法人等。(2)が民間団体等。(1)の指定校は16箇所で、1箇所当たり約800万円を支援。(2)は1箇所で年間約4千万円を支援する。