第5回障害のある学生の修学支援検討会
大学入学共通テストでの合理的配慮
企業の取り組みなど報告
文部科学省の「障害のある学生の修学支援に関する検討会」(座長=竹田一則・筑波大学教授)は9月15日に第5回会議をオンラインで開催した。
最初に、独立行政法人大学入試センターから大学入学共通テストでの合理的配慮について報告があり、続いて同検討会委員の南谷和範・大学入試センター試験技術研究部門教授が私見とした上で補足説明を行った。
18歳人口の減少により大学等志願者数は減少しているが、受験上の配慮決定者数は年々増加しており、特に病弱と発達障害の区分の増加が著しい、という。受験上の配慮は障害種別ではなく、個々のニーズで決定される。配慮の決定は、申請後に、特別支援教育の専門家や医師などで組織される委員会で総合的に審査して行われる。不許可となった配慮事項で代替措置があれば志願者に提案している。年間を通じてセンターは個別に事前相談を受け付けているが、相談の内容が細分化し、職員の負担が大きくなる課題が出てきている、と説明。
またセンターでは大学向けに合理的配慮に関するセミナーを開催し、入試における合理的配慮の趣旨やICT機器の活用などに関する講義をしている。令和5年度はオンライン形式で一部無料配信としたところ、300人を超える受講者が集まり、関心の高さが伺えた、と語った。さらに受験上の配慮の財源は、受験者の検定料と利用大学の成績提供手数料からなるセンターの収入のみなので、少子化による受験者の減少で、財源に不安が生じているとも語った。
こうしたセンターからの報告に「各大学の2次試験の合理的配慮で、大学の障害支援部門の専門性のある職員が関わることが必要」「合理的配慮からリスニングが免除となった際に、リスニングを0点として扱う大学がある。公平性を保つために行う合理的配慮の上の免除である以上、試験の点数の扱いも公平であるべきと、センターから大学に伝えてほしい」などの意見があった。
次に、企業側からの合理的配慮の考え方について、同検討会で委員を務める一般社団法人企業アクセシビリティ・コンソーシアム(ACE)の島津悠貴氏(株式会社堀場製作所グローバル人事部)から報告が行われた。
ACEは有志企業が集まり、誰もが能力を発揮できるインクルーシブな社会の実現に向けて活動する団体で、障害者雇用に関する企業での課題に加え、大学などでの就労準備の課題にも取り組んでいる。2023年現在、会員企業は39社だと説明。ACEは、障害のある大学生を企業で活躍する人材に啓発・育成するというミッションを掲げ、活動として障害のある学生向けキャリアセミナーを開催し、学生が自分の特性や可能性にポジティブに関心を高めるストレングスファインダーを行ったり、先輩社員や学生との交流を図ったりしている。大学関係者にはACE会員企業との懇談会を開き、課題や取り組みの情報交換を行い、好評を得ている、と語った。
島津委員は、企業側の立場から学生が自分の特性を言語化し、チャレンジしたいことを自身で伝えられるようにすることが、企業が合理的配慮や業務の割り振りの際に重要なので、大学でサポートしてほしい、と述べた。
ACEの活動に関して委員からは、「企業側から見て、大学のキャリア支援部門と障害支援部門の連携は取れていると思うか」との質問が出た。島津委員は「連携が取れていないという話は大学からよく聞く。連携がされずこぼれてしまった情報の中に企業が求めるものが多い。大学の支援にアクセスしていない学生も多く、就職後に本人の壁になる。大学での網羅率を上げてほしい」と答えた。
また、文科省から令和6年度予算として、障害のある学生の修学・就職支援促進事業に1億円(前年度3450万円)を概算要求しているとの報告があった。これは障害のある学生の増加、令和6年度から全ての大学に合理的配慮が義務化されることなど、大学が単独で取り組むのは限界があり、大学連携プラットフォームを強化し、専門知識を持つ障害学生支援の人材の育成に向けた研修、障害学生支援の好事例を収集したデータベース構築などを実施するもの。
また、独立行政法人日本学生支援機構が実施した、全ての国公私立大学、短大、高専を対象にした障害のある学生の修学支援に関する実態調査で、障害学生に対する学生生活、就職への支援は着実に進んでいる、との結果報告があった。