中教審第175回大学分科会開く

少子化、将来社会見据えた高等教育の在り方審議スタート

国公私別役割分担検討には異論も

中央教育審議会大学分科会(分科会長=永田恭介・筑波大学長)は10月25日、第175回会議を対面とWEBのハイブリッド形式で開催した。この日は、盛山正仁・文部科学大臣が9月25日、中教審に諮問した「急速な少子化が進行する中での将来社会を見据えた高等教育の在り方について」の詳細が同省から説明され、それに基づいて意見交換が行われた。大学等の存亡にも関わる大きなテーマだけに今後、厳しい議論も想定されるが、第12期の中教審任期中に意見の集約が図られる見通し。

まず、諮問では急速な少子化と変動する社会の中で、高等教育機関の役割が一層重要であるとして、以下の四つの検討事項を示したことが説明された。第一は、2040年以降の社会を見据えた高等教育が目指すべき姿。これからの時代を担う人材に必要とされる資質・能力の育成に向けた具体的方策。その際、成長分野をけん引する人材の育成や大学院教育の改革等にも留意すること。

第二は、今後の高等教育全体の適正な規模を視野に入れた地域における質の高い高等教育へのアクセス確保の在り方。2040年以降の大学入学者数の減少や、地域ごとの高等教育機関を取り巻く状況の違い等を踏まえ、高等教育全体の適正な規模も視野に入れながら、高等教育へのアクセスの在り方を検討する。特に学部構成や教育課程の見直しなど教育研究の充実や高等教育機関の連携強化、再編・統合等、情報公表等の方策を検討。その際、地方の高等教育機関の果たす多面的な役割も十分考慮すること。

第三は、国公私の設置者別等の役割分担の在り方について。国立大学は世界最高水準の教育研究の先導や学問分野の継承・発展等が期待され、公立大学は地域活性化の推進や行政課題の解決への貢献等が、私立大学は多様な教育研究を通じて高等教育の中核基盤を支えることが期待されている。特に地方の中小規模私立大学は地域社会に不可欠な専門人材の輩出や高等教育の多様性や機会均等の維持等に役割を果たしている。短期大学は地方の進学機会の確保や多様な人材養成に、高専は実践的・創造的な技術者養成に、専門職大学は専門職業人の養成に大きな役割を担い、専門学校は専門人材を輩出している。こうした設置者別・機関別等の役割分担の在り方や役割・機能、その実現方策を検討すること。

第四は、高等教育の改革を支える支援方策の在り方。基盤的経費や競争的研究費等の充実、民間投資を含めた多様な財源の確保など支援方策の在り方等を検討すること。

分科会では、冒頭、永田会長が「人を増やす、今以上に高い知を生み出す人あるいは社会に貢献できる人を増やす。そのためには今より高い水準の教育をしていかないといけない。そういう認識で議論をお願いしたい」などと述べた。

委員による意見交換では、「地域にあっても世界レベルの教育が求められている、設置者別ではなく多様性を含んで考えるべきだ。高等教育機関の機能に即した見直しの方が重要だ」「日本と同様の問題を抱えている韓国では定員を減らしていった結果、地方消滅ということが問題になっている。今以上に高い知を生み出す人はどの地方にも必要だ」「ビジョンが求められている。必須なのは縦と横の風通しをよくすることだ。6・3・3制で教育が同質となり、教育の中身と職業との関係が失われてきた。6・3・3制に徐々に手を着けていくことが必要だろう。また人の流動性を拡大、海外へも国内でも学生が動いていける仕組みが必要だ」など設置者別の役割分担という考え方に違和感があり、建設的ではないとする意見が複数委員から聞かれた。

また、「知とはいったい何か。高等教育に通じて提供される知が、人間・自然・社会を理解するための知であるなら、少子化は問題ない。日本の経済力に直接関わるような知というなら、少子化は非常に大きな問題となる。生産活動に役立つ知をどういう形で提供していくのかという話になるだろう。それを意識せずに議論すると、各大学で何を提供できるのかが曖昧になる」「地方にいてもいろいろなところとつながる大学教育の在り方を考えるべきではないか」などの意見も聞かれた。