第7回質の高い教師の確保特別部会開く
山形県教委からヒアリング
大卒新採教員の負担軽減策聴取質疑
中央教育審議会初等中等教育分科会に設置されている質の高い教師の確保特別部会(部会長=貞広斎子・千葉大学教授)の第7回部会が令和5年12月14日、対面とオンラインにより開催された。
この日は、山形県教育委員会から大卒新採教員の負担を減らしつつ育てていく「新採教育育成・支援事業」についてのヒアリングが行われた。同県では近年、精神疾患などが原因で若手教員の休職、退職が増加傾向にあり、特に小学校で大卒新採教員がすぐに学級担任を担うのは負担が大きいとの指摘があり、そこで県教委では令和5年度から小学校の新採教員育成・支援事業を開始した。
事業は二つの内容からなっており、一つは大卒新採教員を教科担任(兼)学級副担任とすること。特定の教科を受け持ちながら学級副担任として学級経営や保護者対応などを学ぶ。このシステムを採用する学校には、新採教員を国の専科加配とする。二つ目は、大卒新採を担任とする場合の新卒教員支援員の配置。支援員には再任用短時間職員または非常勤講師を配置する。支援員が教員免許を保有している場合には、大卒新採教員の特定の授業を担当する。保有していない場合は担任業務のサポートをする。
令和5年度は106人の新卒小学校教員が採用され、24人が教科担任(兼)副担任に、82人が支援員を配置して学級担任となった。
事業開始から8カ月後に大卒新採教員にアンケートを実施したが、空いた時間には「教材研究」、「他の先生の授業を見る」に多くが充てられていた。どちらの教員も、教員1年目としての満足度は高かった。例えば教科担任(兼)副担任からは、「さまざまな学年や先生の授業、学級経営、保護者対応を見ることができ、来年度から生かしたい」などの意見があった一方で「不安ではあるが学級担任をしたかった」という声もあった。
また学級担任(支援員配置)からは、「宿題の点検などの学級事務もしてくれるので助かる」などの意見があったが、「来年度支援員なしで学級経営ができるか不安」という新卒教員も見られた。
山形県教委は、週6コマ程度の空き時間ができ、教材研究などに充てられるようになったこと、大卒新採教員の精神疾患による特別休暇取得者がゼロになったこと、教員が自分の授業を見させ、学校全体で初任者を育てていこうとする意識が芽生えたこと、この事業を知り、他県から山形県の採用試験受験者も現れたことなどを報告した。
今後の課題としては、専科加配を大卒新採教員に充てることで、大卒新採教員がいない学校に専科加配ができなかった点がある、としている。
山形県教委の報告に対して、特別部会の委員からは、「スキルを身に付け、経験を積んで、大卒新採の教師がどのように定着しているのかを発信してほしい」などの声があり、また「新採教員支援員の採用のための財源の確保はどうしているか」「支援員の採用方法を知りたい」という質問が出された。
山形県教委は「財源は県単独で2億円以上確保している。知事を含め若い先生を守ることに理解が得られている。採用は再任用短時間勤務希望者が多く、うまく当てはまった。教員免許を持っていなくても、司書経験者など地域で信頼を得ている人にピンポイントで声かけをして確保した」と説明した。
次に文科省から、特別部会の論点として、教師の質の向上、若手教師の支援、不登校・特別支援など多様化、複雑化する教育課題、マネジメント体制構築などの観点から、教職員配置の在り方、定数算定基準をどう考えるかが示された。これに対して委員からは「小学校が35人学級になったのに、中学校が40人のままでは、学力低下などの影響が出る」「加配だけでなく、教職員の基礎定数を変える必要がある」「公立学校の教職員数は全国一律では限界があり、現場努力に依存することになる。学校予算の範囲で定数に弾力性が求められる」「現状ではぎりぎりの人員配置で、問題が起きた時に対応できない。教頭など管理職が授業を行うとなると、学校の管理ができなくなる」「若い先生の割合が増加しているが、新任教員を1人としてカウントしてよいのか。若手の先生の能力を早く上げていく山形県のような支援体制が必要」など定数の変更、弾力化などを求める意見が相次いだ。