令和6年度文科省予算案決定

経常費補助 私大等2,978億円、高校等1,022億円

私大等の経営改革を支援 私立高校等のICT環境整備

令和6年度政府予算案が令和5年12月22日に閣議決定された。文部科学省の一般会計の総額は前年度比0・8%増の5兆3384億円で、うち私学助成関係予算の総額は前年度比7億円増の4093億円。内訳は私立大学等経常費補助が前年度比2億円増の2978億円、私立高等学校等経常費助成費等補助が同2億円増の1022億円、私立学校施設・設備の整備の推進が同3億円増の93億円となった。

このうち私立大学等に関しては、同省では令和6年度から10年度までの5年間を集中改革期間と位置付けて「時代と社会の変化を乗り越えるレジリエントな私立大学等への転換支援パッケージ」によって、将来を見据えたチャレンジや経営判断を始めとした意欲的経営改革を行えるよう強力に後押ししていく方針。令和8年度以降、一定の基準に該当する場合、経営改革計画の策定を学校法人側に求め経営の健全性の確保等を図る考え。

私立大学等経常費補助2978億円の内訳は、一般補助が前年度比1億円増の2772億円、特別補助が同2億円増の207億円だが、特別補助に一般補助も加えて同転換支援パッケージを実施する。その内容は、(1)少子化時代を支える新たな私立大学等の経営改革支援(20億円)。少子化時代をキラリと光る教育力で乗り越える私立大学等戦略的経営改革支援(45校に1千万円~2500万円程度に加え一般補助の増額)。中小規模を中心に大学、短大、高専を支援する。また複数大学等の連携による機能の共同化・高度化を通じた経営改革支援を、5グループを選び実施する。支援額は1グループ3500万円程度。この取り組みを通じ各学校法人・大学が共同利用できる共通的なプラットフォームの在り方を検討する。  

(2)主体的な経営判断やアウトリーチ型の基盤として、各種データや知見・ノウハウをフル活用するためのシステムの構築を推進する「私学経営DX」を展開する。予算額は1億円。改革・改善の機を失わない主体的な経営判断支援の他、連携・統合等を希望する学校法人への経営相談の充実、潜在的な個別ニーズを踏まえたマッチング支援などを文科省、私学事業団により進める。

(3)成長分野等への組織転換促進のための支援として理工農系学部等について一定の条件の下、学部設置以降、完成年度を迎えるまでの設置計画履行期間中に必要な経常的経費を支援する。集中改革期間中の時限措置。一般補助による支援も。

(4)定員規模適正化に係る経営判断を支えるための支援。経営改善計画に位置付けた上で運営面・教育面において一定の要件を満たす場合に限り学生募集停止を行った学部等の継続的な教育研究活動を支援する。一般補助による支援。時限措置。

(5)私立大学等改革総合支援事業、予算額は112億円(一般補助+特別補助)。自らの特色・強みや役割の明確化・伸長に向けた改革に全学的・組織的に取り組む大学等を支援する事業。Society5・0の実現等に向けた特色ある教育の展開(105校程度)、特色ある高度な研究の展開(45校程度)、地域社会の発展への貢献(125校程度)、社会実装の推進(50校程度)の4メニューがあり、1校当たりの特別補助交付額はタイプにより異なるが、1100万円~2600万円程度で、一般補助による増額措置もある。  

特別補助ではこのほか、研究施設等運営支援及び大学院等の機能高度化に115億円の予算が、私立大学等における数理・データサイエンス・AI教育の充実に7億円が計上されている。5項目のうち(1)~(4)は新規事業。  

私立高等学校等経常費助成費等補助1022億円の内訳は、一般補助が852億円(前年度比1億円増)、特別補助が138億円(同1億円増)、特定教育方法支援事業が32億円(前年度と同額)で、一般補助では中学、高校とも生徒1人当たり単価を前年度比0・9%増額している。特別補助に関しては、教育改革推進特別経費が55億円(前年度と同額)、幼稚園等特別支援教育経費が75億円(前年度比4億円増)、授業料減免事業等支援特別経費が7億円(前年度比3億円減)、過疎高等学校特別経費が1・6億円(前年度とほぼ同額)となっている。  

教育改革推進特別経費55億円の中の教育の質の向上を図る学校支援経費は17億円で、この中には、以下の8項目のメニューが設けられている。(1)次世代を担う人材の育成の促進(外部講師の活用等により教育の質の充実に資する取り組みが対象)=グローバル人材育成のための英語教育の強化、数理・データサイエンス・AI教育等の推進等の他、新たに外国人の入学生の受け入れも対象に)、(2)ICT教育環境の整備推進=情報通信技術活用支援員の配置やICT機器の管理委託(リース含む)等が対象、(3)教育相談体制の整備=SCやSSW等の活用、不登校の生徒等の教育機会についての支援、(4)職業・ボランティア・文化・健康・食等の教育の推進、(5)安全確保の推進=スクールバスにおける警備員等の配置、児童生徒等への講習会(防犯、防災、交通安全)の実施等が対象、(6)特別支援教育に係る活動の充実、(7)外部人材活用等の推進=教員の負担軽減を図るため学習指導員、部活動指導員等の専門スタッフや外部人材等の活用等が対象、(8)教員業務支援員の推進(新規)=教員が児童生徒への指導や教材研究等に注力できる体制整備のための教員業務支援員の配置等が対象。  

一方、私立学校施設・設備の整備予算は総額で93億円。内訳は(1)耐震化の促進が40億円、(2)私立学校施設環境改善整備が10億円、(3)私立高等学校等ICT教育設備が約21億円、(4)私立大学等教育研究装置・設備が23億円。(1)の耐震化促進の内訳は耐震改築(建替え)事業が20億円、耐震補強事業が13億円、その他耐震対策事業が7億円。(2)の私立学校施設環境改善整備事業は熱中症対策として教室や体育館等へのエアコンの設置やバリアフリー対策、安全・安心な生活空間の確保に必要な基盤的設備等の整備を支援。また施設の高機能化やエコ改修などの整備を支援する。補助率は大学が1/2以内、高校等が1/3以内。(3)の私立高等学校等ICT教育設備は、個別最適な学びを目指して私立高校等におけるICT環境整備を支援する事業。補助率は端末整備に関しては2/3以内。補助対象学校種は学校法人が設置する高校、中等教育学校(後期課程)、特別支援学校の高等部。端末整備での補助対象設備は学習者用コンピュータ(購入及び更新)、補助対象経費の範囲は1校当たり100万円以上、端末単価は5万5千円。そのほかICT教育設備整備への支援もある。