武蔵野大学の取り組み

来年4月にウェルビーイング学部を開設

最も重要な概念に立ち戻る教育実践

武蔵野大学(東京都江東区)は2024年4月、13番目となる新たな学部「ウェルビーイング学部」を武蔵野キャンパス(東京都西東京市)に開設する(設置構想中)。同学部では、慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科の前野隆司教授を学部長に迎えて、科学や技術の最先端の知見や成果も取り入れた学際的なアプローチで幸せ、生きがい、安心、福祉、健康、平和など、人々と世界のウェルビーイングをデザインし、創造していく人材を育成する。

入学定員は80人(2024年度)、取得できる学位は学士(ウェルビーイング学)、専任教員は16人となる予定。

ウェルビーイングは身体的、精神的、社会的に良好な状態にあることを意味する概念で、日本語では「幸福」「しあわせ」と翻訳されることも多く、同大学が掲げる「世界の幸せをカタチにする。」というステートメントにも合致する。2023年3月の中央教育審議会「次期教育振興基本計画について(答申)」では、「教育を通じて日本社会に根差したウェルビーイングの向上を図っていくことが求められる」と示されるなど、近年、その重要性が高まっている。

こうした中、新たに開設される同学部では、ウェルビーイングの実践に向けて、ウェルビーイングについての社会学・心理学的知見や、新たに創造的なデザインを行うための工学的手法・デザイン学的手法を学ぶことが必要となるため、幅広い学術領域の習得に加えて、自然、地域、企業、世界でのフィールド・スタディーズから得られた体験的知見と創造的実践力を統合させることによって、ウェルビーイングデザイナーを育成し、輩出するカリキュラムを構築している。

▷ウェルビーイング学・ポジティブ心理学等を得意とする海外研究者との連携や短期留学▷全国各地域(沖縄から北海道まで)と連携した自然体験や地域課題解決実習▷ウェルビーイングに関心が高い企業、医療福祉施設、自治体等での創造的な実習―等によって「地球ぜんぶ」を舞台として学び、議論し、実践していく。

4月12日に同大学有明キャンパスで開催された記者発表会で、西本照真学長は「本学が100周年を迎える2024年にウェルビーイング学部を開設することを大変喜ばしく思っている。未来に向けて、皆さまと一緒に大きなウェルビーイングのムーブメントをつくっていきたい」と述べた。

続いて、前野教授が「産業革命以降の経済成長重視のパラダイムからウェルビーイング重視のパラダイムに変わる大きな転換期に世界初となるウェルビーイング学部を立ち上げる。同学部の各学生がウェルビーイングを高めるとともに、社会課題を解決し、世界のウェルビーイングを高めていく」と説明した。また、「ウェルビーイングという人類にとって最も重要な概念に常に立ち戻る教育を実践する」との考えを示した。

実習紹介では、同学部就任予定の島田由香氏(㈱YeeY代表取締役)が和歌山県からオンライン参加し、島田氏が担当する同県の梅畑での実習について「梅の収穫という体験を通じて地域や農家とのつながり、自分のパーパスや生きがいを考える機会を提供していく」と話した。

ゲストスピーカーとして登壇した鈴木寛氏(東京大学教授、慶應義塾SFC特任大学教授、ウェルビーイング学会副代表理事)は「武蔵野大学の『世界の幸せをカタチにする。』というステートメントに基づく充実した積み重ねの上でウェルビーイング学部が発展することを確信している」と述べた。