青山学院初等部のSDGsへの試み

「フードロスをなくそう」の取り組み

「未利用魚」について出張授業

SDGsへの取り組みは最近、企業をはじめ、学校現場でも進んでいる。青山学院初等部(東京都渋谷区)は社会科とSDGsに関するプロジェクト活動、給食室がタッグを組みSDGsについてさまざまな取り組みを行っている。その一つが、「フードロスをなくそう」という取り組み。昨年3月から月1回、給食で「未利用魚」を利用している。9月20日には、魚のフードロス削減のためのプラットフォーム事業等を行っている㈱ベンナーズ(福岡県福岡市)の協力で出張授業が行われた。

出張授業は5年生社会科向け(約120人)と、続いて同初等部のSDGsプロジェクトに所属する児童向け(5~6年生18人)に、同社の井口剛志社長が「未利用魚とは?」「海の豊かさを守ろう」をテーマに講演し、「未利用魚解体ショー」も行った。

未利用魚とは、利用可能ではあるが、何らかの理由で利用されていない魚といわれている。利用されていない原因とはサイズが規格外であること、数が揃わないこと、傷がついていることなどで、廃棄されているのだ。その割合が全体の漁獲量の30%にも及ぶ現状を児童たちは学んだ。

授業では水産業界の課題にも話が及んだ。温暖化の影響で生態系が壊れ魚が死滅すること、深刻な問題として挙げられたのは、乱獲のため絶滅の危機に瀕していることだ。漁師さんや日本の水産会社を救うために、今できることとして、井口社長は「未利用魚を活用したおいしく手軽なサービスを提供しよう」と述べた。

井口社長による未利用魚の解体ショーが行われ、児童たちは腹、背中の順にさばいていく様子を熱心に見入っていた。授業後、児童からは「未利用魚は何種類あるのか」「未利用魚を加工している所はどのくらいあるのか」「一番おいしい未利用魚は何か」「未利用魚を売っているお店はたくさんあるのか」など活発に質問が出された。 

井口社長は「豊かな資源のある海を守るために考えて実行してほしい。あきらめないことが最強の能力です」と児童たちにメッセージを送った。児童たちは「毎年たくさんの未利用魚があることにびっくりしました。これから未利用魚について学び深めていきたいです」とお礼の言葉を述べた。

また、SDGsプロジェクトの生徒たちは、「ミノカサゴ」「タカノハダイ」「アイゴ」がなぜ、未利用魚なのかをそれぞれの魚について理解した。

SDGsプロジェクトに所属している6年生の細田あおいさんは「未利用魚を給食で食べることができてよかった。未利用魚について自分たちも調べてみました」と、同じく6年生の若林玲さんは「未利用魚については知らなかった。もっと世の中に出してほしい。給食の未利用魚はおいしかった」と感想を語ってくれた。

同初等部では、3月にオオニベの山椒揚げ、4月にはオジサンのカレームニエル、5月にはイラのフライドフィッシュ、6月にはフエフキダイのから揚げさっぱりソース、7月にはシイラのフライ(フィッシュバーガー)が給食に出された。「おいしい」「身が軟らかくて食べやすい」と好評だった。  

同初等部が取り組んでいるSDGsの実践として、ほかに、教科では3年生以上で「社会科」、2年生で「生活科」で行われている。谷純太教諭は「2年生ではSDGsの持続可能な開発17の目標別に色を塗り、テーマを自分たちに分かりやすい言葉に置き換えて考えるようにしています」と紹介した。また、プロジェクト活動には、学校生活を成り立たせる活動や学校生活を一層良くする活動などがある。今年度、1年生から6年生までを対象に、夏休みに「SDGsアワード」を行った。夏休みにSDGsについて活動した感想を応募するもので、約20人の応募があり、全て校内に掲示し表彰した。