東京薬科大学の取り組み
令和6年能登半島地震の被災地で支援活動
薬剤師の実務経験を有する教員ら派遣
東京薬科大学(東京都八王子市)は令和6年能登半島地震に対し、薬剤師としての実務経験を有する教員ら4人を被災地へ派遣し、支援活動を実施した。東京都薬剤師会が東京都から要請を受け、災害派遣薬剤師を募集し、同大学がこの要請に応えた。
派遣者および派遣期間は次の通り。
松本有右常務理事/客員教授:2月2日~6日
秋山滋男准教授(薬学実務実習教育センター所属):2月2日~6日
鈴木信也准教授(同所属):1月24日~28日
原直己講師(同所属):1月21日~25日
今回、出動した4人の教員らは、過去に新潟中越地震や東日本大震災、熊本地震、ダイヤモンド・プリンセス号における新型コロナウイルス長期検疫対応等に際して、いずれかが薬剤師として現地での活動に参加しており、その経験を踏まえ、輪島市ふれあい健康センターを拠点として、1班3人(東京都の薬剤師)が被災地(石川県輪島市)での医療支援活動に携わった。
今回の派遣では、被災地で主に以下の災害支援活動を実施した。
▽常用薬確認表により、各避難所の被災者の常用薬調査を行った。
▽各避難所を巡回し、保険診療あるいは災害処方箋により調剤された薬の交付および服薬指導を実施した。
▽各避難所の衛生環境の調査と改善に向けた活動を実施。断水している避難所もあり、インフルエンザ、ノロウイルス、新型コロナウイルスが流行しつつあった。この状況に対し、感染拡大を防止するため、除菌・殺菌に効果のある薬剤の情報提供や手洗い場での石鹸(ハンドソープ)の設置を促した。また、経口補水液の作成方法の情報を共有した。
▽近隣薬局やモバイルファーマシーの薬剤在庫情報を管理・共有した。また、各避難所に点在するOTC医薬品(要指導医薬品と一般用医薬品)の情報収集、管理実態調査を行い、集約した情報をクラウド化し、医療関係者からのアクセスを可能にした。
▽OTC医薬品使用の際の適正使用について、患者や他の医療従事者に情報提供を行った。
▽医師や看護師、その他現地スタッフからの要請等による個別患者対応等を行った。
教員らは今回の活動を振り返り、「チームリーダとして、改めて『災害時医療対応の原則』の重要性を認識した」「災害医療で最も基本かつ重要なことは、指揮命令系統の確立と遵守であることを改めて実感した。その上で今回の災害薬事に関する活動で、我々薬剤師は薬剤師法第一条にある【薬剤師は、調剤、医薬品の供給その他薬事衛生をつかさどることによって、公衆衛生の向上及び増進に寄与し、もって国民の健康な生活を確保するものとする】ことを実践したと感じる」「被災後の混乱の影響は残っているものの、日を追うごとにフェーズが移行し、復興の兆しを感じた。我々もフェーズごとに現れる災害薬事関連の課題に対して、解決に向けて行動することを心掛けた」「災害後のフェーズの変化に伴い、必要となる医薬品のニーズが異なることが分かった。薬剤師として、環境・衛生面での役割が極めて重要であることを痛感した」とコメントしている。
同大学では今回の経験を生かし、災害薬事で活躍できる薬剤師の養成を目指して、教育活動を行っていく考え。