高等教育の修学支援新制度の在り方検討会議

多子世帯の無償化実施踏まえて

学業成績要件見直しなど検討

文部科学省は3月14日に第1回高等教育の修学支援新制度の在り方検討会議を対面とオンラインを併用して開催した。 

同会議は令和5年12月に閣議決定された「こども未来戦略」の中で令和7年度から多子世帯の学生等については授業料等を無償とする措置等を講ずるとしたことを踏まえて、高等教育の修学新制度での学業要件等の見直しを図るために設置され、今年6月には成案を取りまとめる予定。座長には福原紀彦・日本私立学校振興・共済事業団理事長が選任された。

第1回検討会議では初めに同省から令和2年度に始まった返済不要の修学支援新制度の説明があった。同制度は住民税非課税世帯で、(1)授業料等減免として、大学に通っている場合、入学金に26万円、授業料に70万円、併せて(2)給付型奨学金として私立大学に通っている場合、自宅生で年額46万円、自宅外生で年額91万円が支給される。また世帯の年収に応じて、住民税非課税世帯の3分の2、3分の1、4分の1などが支給される。国公私立や学校種、自宅生か自宅外生かで支給額に違いがある。令和6年度からは、年収600万円程度の中間層で子供が3人以上の多子世帯や、理工農系の学生に対しても支援が始まる。

支援対象者の学業成績などの要件は、採用後に大学などの学修状況に厳しい要件を課し、満たない場合は支援を打ち切る措置が設けられている。

学業成績の基準は「警告」、「停止」、「廃止」(支援打ち切り)の3区分。

警告の基準は、(1)修得単位数の合計が標準単位数の6割以下、(2)GPAが下位4分の1にある時、(3)授業の出席率が8割以下など。停止では2回連続で警告となった場合、2回目が「GPAが下位4分の1にある時」のみであること(次回の学業成績の判定で、廃止、警告に該当しなければ支援は再開)。廃止では、(1)留年が決定した時、(2)修得単位数の合計が標準単位数の5割以下、(3)履修科目の出席率5割以下、(4)警告の区分に該当する学業成績が連続した時、となっている。

新制度では対象機関となる大学などに、実務経験のある教員による授業科目を一定数以上配置などの教育要件を設定。経営に問題がある大学などが救済されることがないよう経営要件も設定されている。また新制度の成果の報告もあり、非課税世帯などを対象にした高校生等奨学給付金受給者の、令和4年度大学等への進学率は69%と、平成30年度の4割程度から大きく上昇した。

続いて同省から検討会議の論点案が示された。支給対象学生数が拡大した新制度の趣旨や目的を達成する手段として、学業要件に変更や見直す点はないかとし、具体的に次の論点を挙げた。(1)奨学金申請段階では、高校在学時の成績だけで判断せず、本人の学修意欲や進学目的を確認している。大学などへ進学後は厳しい要件を課し、満たせない場合は支援打ち切りとなるが、この考えを継続すべきか。(2)廃止の要件は継続すべきか。見直し事項はないか。(3)警告の要件は継続すべきか。見直し事項はないか。(4)止むを得ない事由がある場合は廃止、警告の区分に該当しないとする考えを継続すべきか。

これらの論点について出席委員の間で論議された。学業要件に関する意見が多くあり、「GPAは科目により異なるので共通の基準として適切か」「支援対象者が増えるので、停止の『GPAが下位4分の1の範囲にある』という基準は厳しいのではないか」「GPAを緩和し、出席率、修得単位数を厳しくすることは考えられないか」「高校での成績をあまり重視しない現状の要件の見直しは必要ないか。低い成績で大学に入学しても入学後に大変になる」などの意見が出された。

出席率の要件については、「大学に入ることが目的となってしまうのを危惧する。出席要件が緩いのではないか。成績を上げるのは難しいかもしれないが、出席は本人の努力次第で出来る」「出席率の要件に関しては、論点の整理がついた時点で、現役の高校生、大学生の意見を聞いてほしい。生活費を得るためにアルバイトをしなければいけない現状もある」などの意見があった。同省の担当者は委員の意見に対して「議論を重ねた上で能力は出席率だけでは分からないので、GPA、修得単位数も要件に置いた。他の指標となり得るものがあれば議論いただきたい。この3月に新制度で支援を受けた学生が卒業するので、アンケートを考えていて、学業要件なども尋ねたい」と述べた。