中教審第144回初等中等教育分科会
質の高い教師の確保策など審議
特別免許状の授与増も議題に
文部科学省の中央教育審議会初等中等教育分科会(分科会長=荒瀬克己・独立行政法人教職員支援機構理事長)は6月17日、同省でオンラインも併用して第144回会議を開催した。議題は(1)「令和の日本型学校教育」を担う質の高い教師の確保のための環境整備に関する総合的な方策について(審議のまとめ)、(2)教育人材確保に関する取り組み(3)博士人材活躍プラン~博士をとろう~。
初めに同省から議題(1)に関して、今年5月に中教審の質の高い教師の確保特別部会が取りまとめ、盛山文科大臣に答申した審議まとめの概要が説明された。審議まとめでは、我が国の学校教育と教師を取り巻く環境の現状認識が記述され、教師を取り巻く環境整備の基本的な考え方、学校における改革の更なる加速化、学校の指導・運営体制の充実、教員の処遇改善、教師を取り巻く環境整備の着実な実施とフォローアップ等に関してさまざまな施策を提言している。
また議題(2)に関して、現職以外の教員免許保有者向け研修、民間企業のアイデアを生かした教員採用プロモーション、大学生を対象に教師を目指すことへの不安や悩みを解消する場の提供、学校スタッフマッチングシステムの構築など、教師人材の確保強化に向けた複数の自治体の取り組み事例が紹介された。
また、多様な専門性や背景を持つ人材を学校組織の中に積極的に取り組んでいくことの必要性から平成26年に特別免許状の授与に係る教育職員検定等に関する指針を策定、令和3年には指針を改訂し、授与件数が増加(平成30年208件↓令和4年500件)したものの、都道府県間で授与件数に大きな開きが生じたことや、「情報Ⅰ」への対応で特需があったことなど課題が散見されたことから、今年改めて指針を改訂、授与候補者の教科に対する専門的知識経験・技能の考え方として、教科の内容を完全に包含していなくても、自身の専門分野を中核として、当該教科に関する知識がある場合には授与が可能であることを明確化。特別免許状授与者であっても、任期付きや非常勤として任用することは可能であることなどを周知していることなどを報告。さらに文科省から、今年3月に中教審教員養成部会が優れた教師人材の確保に向けた奨学金返済支援の在り方について議論のまとめを策定したことなどが報告された。(1)の審議まとめに関しては貞弘斎子部会長(千葉大学副学長)が「(教員の)処遇改善策が約50年ぶりに俎上に乗った。(質の高い教師の確保の)劇的万能薬はない。全ての関係者が当事者となり取り組むことが重要で、これからがまさに正念場」と語っており、また委員からは「事務職員を大いに活用してほしい」「支援スタッフの配置の充実が重要で、自治体間で格差が生じないように定数化してほしい」といった意見」、マスコミの注目が教師の処遇改善に集中したことを残念がる意見や、(1)の審議まとめについての情報が市町村教育委員会や学校に十分届いていない状況にあることを指摘して、国の(質の高い教師確保の)決意が教員、国民に理解されるようなムーブメントの重要性を指摘する意見も聞かれた。また教員の仕事が医師と似ているとした上で、改めて教員の給与体系の検討を求める意見も聞かれた。そのほか教員が敬遠される原因のかなりの部分が生徒指導と関わっていることを指摘、より専門性の高い生徒指導ができるよう、専門的分業についての議論の重要性を強調する意見もあった。またどの業界でも人手不足で、若者の奪い合いが生じている中で、若者を呼び込むためには裁量権(の付与)と時間的自由度が大切であり、オンラインでヒューマンリソースをシェアすることに挑戦すべきだとの意見も出された。裁量権の拡大という、キーワードは複数の委員から出された。
最後に文科省の矢野・初等中等教育局長が、「(質の高い教師の確保のためには)一体的総合的な支援以外にはない。(実現は)直ぐには難しく、そう簡単ではない。政府の骨太の方針、令和7年度予算概算要求に我々の決意を出していきたい」などと語った。
このほか議題(3)の博士人材活躍プランに関しては、博士人材はアカデミアのみならず、産業界や行政等の世界でも活躍できること、産業界に対して盛山文科大臣が協力等を要請したこと、活躍プランの中には初等中等教育に関わることも盛り込まれていることなどが説明された。秋田喜代美委員(学習院大学文学部教授)からは、「大学卒業後の進路を広げることが大事で。博士人材は探究のプロ」とした上で、高校での活用や、複数の省庁が手を組みさまざまポストを用意することなどを要請した。