第13回高等学校教育の在り方WG

3校から実践等を聴取

不登校経験者への支援等で質疑応答 

中央教育審議会初等中等教育分科会個別最適な学びと協働的な学びの一体的な充実に向けた学校教育の在り方に関する特別部会の高等学校教育の在り方に関するワーキンググループ(以下、WGと表記、主査=荒瀬克己・独立行政法人教職員支援機構理事長)は6月20日、文部科学省でオンラインも併用して第13回WGを開催した。   

この日の議題は、全日制・定時制・通信制課程の在り方、遠隔授業配信センターの体制等の在り方、高等学校の指導体制の充実のための方策等。(1)学校法人大阪YMCAのYMCA学院高等学校(広域通信制・総合学科)が、発達障害や起立性調節障害などの多様な課題を抱える生徒に対して取り組んでいる合理的配慮や学びのユニバーサルデザイン等について、(2)岡山県立岡山御津高等学校が令和7年度から導入する、全日制高校に在籍したまま一部の科目を他校の通信制課程で単位取得できる制度や、不登校経験者を対象とした新たな入学者選抜制度について、(3)同一敷地内にあり、施設を共有する兵庫県立阪神昆陽高校と兵庫県立阪神昆陽特別支援学校の交流及び共同学習について、それぞれ学校長や教育委員会関係者等からヒアリングを実施、質疑応答が行われた。   

またこの日のWGでは文科省事務局や同WG委員により昨年7月から今年2月にかけて行われた学校等(大阪府立西成高校、太平洋学園高校、高知県遠隔授業配信センター)の視察結果も報告された。このほか前回WGで出された意見等を反映してコーディネーターの活用や働き方改革に関する記述等が追加された意見の整理案が示された。   

このうち(1)のYMCA学院高校の取り組みについては、同WG委員の鍛冶田千文校長が、生徒との間で自分と周囲の人、自分の学びを諦めず、自ら学ぶ姿勢を大切にすることを約束してもらっていて、生徒の4分の1から合理的配慮の申請があり、別室受験や廊下受講、途中離席、指名発表なしなどの合理的配慮をしていること、学びのユニバーサルデザインを大切にして、UDフォントを活用、オンラインヘルスケアやサイレントフロア、サイレントランチルームなどを設けていることなどを紹介。そうした取り組みで生徒の体や心の面で成果が見られていること、大阪府内の通信制高校と連携して合同の教員研修会や相談会、求人・進学説明会などを実施していることなどを報告した。また県立岡山御津高校に関しては、一部の科目を他校の通信制課程で単位修得できる制度を活用して不登校経験者が全日制高校を卒業しやすくなる仕組み(フレックス制)を設け、他校からの転学要件を緩和、入試制度は志望理由書と面接のみで学力検査はないこと、岡山県内の中学生を対象に教育支援センターを校内に設け生活や学習を支援すること、2年次から特別進学、教養・自然・スポーツ、ビジネス・情報、保育・福祉など五つの系列を選択することなどを説明した。   

兵庫県立高校特別支援学校の交流・共同学習に関しては、具体的には高校生と特別支援の1年生が受講する体育、美術、特別支援の生徒が高校の授業を受講する情報処理、数学Ⅰ、キャリアプランニングを受講する高校生が特別支援の「ビジネス総合」の授業の一部を受講する、両校生徒と近隣の高校生徒の共同学習などがあり、生徒からもこうした取り組みを評価する意見が出されている。同校は社会におけるノーマライゼーションの理念を進展するための礎となる学校を目指している。   

こうした報告にWGの委員からは、「人気が高まった場合、選抜をどうするのか」「中学生の不安を解消するためには全日制課程はどうしたらいいのか」「岡山県ではこうした学校を拡大していくのか」などの意見が聞かれたほか、日本私立中学高等学校連合会から参加している長塚篤夫・順天中学高等学校長は鍛冶田校長に対してサテライト施設でも本校と同様の合理的配慮が行われているのか、一部通信制高校の入試日程が県内での申し合わせ日より先行していることに関して質問したが、鍛冶田校長は同校は順守してるが一部に順守していない学校もあり、行政に指導を要請していることなどを明らかにした。